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2025年11月11日18:20

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「日本の夜と霧」大島渚〜時代の空気を記録するカメラ〜

日本の政治的な映画ということで、久しぶりに大島渚の問題作『日本の夜と霧』を見直してみた。1960年の日米安全保障条約に反対する安保闘争をテーマにした作品だが、公開からわずか4日後、松竹が大島に無断で上映を打ち切った。これに対し大島は猛抗議し、翌1961年に松竹を退社した。契約期間が残っていたため、違約金を払ったそうだ。

1960年の安保闘争。学生が政治に声を上げていた時代の熱気が感じられる。霧の深い夜、1960年安保闘争における6月の国会前行動の中で知り合った新聞記者の野沢晴明(渡辺文雄)と、女子学生の原田玲子(桑野みゆき)の結婚式が行なわれていた。ワンカットの長回しでカメラは結婚式の新郎新婦、司会進行や列席者の挨拶を左右にパンをしながら、カットを割らずに撮影している。また役者の台詞の言い間違いも度々あるが、それにNGも出さずに撮影したため、舞台でやっているような緊張感が溢れている。大島渚は、松竹側から内容に問題ありと制作中止を言い渡されないように、異例のスピードで映画を仕上げたと言われている。ワンカットの長回しも、台詞の言い間違いOKも、そういう事情もあったようだ。

結婚式から始まり、いつのまにか列席者たちの安保闘争に関する議論になっていく。逮捕状が出ている全学連の学生・太田(津川雅彦)が突然乱入し、国会に向ったまま消息を絶った学生・北見(味岡享)の謎の失踪事件を語り始めた。北見をデモに誘ったのは、新婦の桑野みゆきだった。結婚に逃げこむことで、過去の運動を忘れ去っていいのか?さらに10年前の破防法反対闘争における学生闘争のあり方、当時スパイ問題があって党から査問され自殺した学生の真相などをめぐっての議論になり、日本共産党の方針転換に翻弄された学生たち、武力闘争から「歌と踊り」による平和的大衆運動へと移行していった学生たちの疑問、革命とは何かを問うそれぞれの主張と、男女の三角関係や学生の経済的格差なども織り交ぜながら描いていく。

議論される内容もさることながら、単純に語られる台詞、当時の学生たちがやり取りする言葉そのものが、今の時代の若者たちには理解不能なものだろうし、ついていけないだろう。党員や全学連、その周辺のシンパやゴロツキも含めて、当時はそれぞれの立場で熱く議論が交わされていた。一方で当時の熱狂やムーブメントに単純に心酔してしまう危うさも感じる。まわりに流されず、同調圧力に動かされずに、自分の頭で立ち止まって考えることをしないと、党派性やイデオロギーに飲込まれ、どんどん足元を見失ってしまう。「なぜ歌ばかり歌うようになったのだろう」という佐藤慶の台詞もあったが、感情の高ぶりや精神の高揚こそ危ういものだとあらためて思う。当時の時代を切り取った演劇的な作品であり、ドキュメンタリー風の記録的なフィルムでもある。大島渚は確かに時代に敏感な、時代の空気を切り取る監督だったと思う。


1960年製作/107分/日本
配給:松竹

監督:大島渚
製作:池田富雄
脚本:大島渚、石堂淑朗
撮影:川又昂
音楽:真鍋理一郎
美術:宇野耕司
キャスト:桑野みゆき、渡辺文雄、津川雅彦、小山明子、芥川比呂志、戸浦六宏、佐藤慶、吉沢京夫、速水一郎、左近允宏、味岡享
写真引用コピーライト1960 松竹株式会社
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