あまりにも有名なフィルム・ノワールの古典的名作。原作がダシール・ハメットの同名探偵小説を1941年にジョン・ヒューストンの脚本・監督で映画化。 同じ原作の3度目の映画化であり、その中で最も有名な作品。また、脚本家として活躍していたヒューストンの監督デビュー作でもある。この作品で主演のハンフリー・ボガートをスターに押し上げた。1930年に単行本がクノップ社から出版されたダシール・ハメットのこの長編小説は、ハードボイルド小説の代表的な作品として知られ、主人公のサム・スペードは、のちに数多く書かれることになるハードボイルド探偵のモデルとなった。
いろんな登場人物が次々と探偵サム・スペード(ハンフリー・ボガート)のもとを訪れ、次々と事件が起き、複雑に展開していくのだが、映像としての見せ場はまあまりない。ただサム・スペードという探偵は、女好きであり、行動的であり、タフで強い意志と信念を持った男として魅力がある。完全な人間でないところもいい。相棒の妻とデキていたり、嘘をついている悪女と分かっていてもキスしたり、拳銃を奪ってもすぐ相手に返してみたりと、一面的な正義の人ではない。物語では探偵の相棒が早々に殺されてしまうのだが、魅力的な謎の女ブリジッド・オショーネシー(メアリー・アスター)に魅せられつつも、彼女の仕業だと分かった最後の場面で、「あなたを愛してるのは本当よ」と探偵に縋る女に言う。「一つだけ教えてやろう。相棒が殺されたら、男は黙っちゃいない。君がどう思おうと関係ない。おれたちは探偵だ。相棒が殺されたら、犯人は逃がさない。それが探偵ってものさ」と、なかなかカッコいい。
暴力アクション描写はほとんどない。殺人事件は起きるのだが、それは描かれない。相棒が殺される場面も、次の殺人も、船長の死も物語の舞台裏で起きており、サム・スペードが用心棒の拳銃を奪ったり、薬の飲まされて殴られたりする小競り合いがあるだけだ。どちらかというと台詞の応酬が多い。立場が二転三転するが、映像的なサスペンスはあまりない。客観的でクールな描写が小説向きのような気がする。かつてマルタ島の騎士団がスペイン王カルロス一世に献上した純金像が海賊に奪われ、その後に黒いエナメルで塗られたお宝「マルタの鷹」の像として、人間たちの争奪戦となる物語なのだが、やっと手に入れた「マルタの鷹」は重い鉛のニセモノだった。「重いな。ナンだ?」という刑事に、「夢がつまっているのさ」という最後のハンフリー・ボガートの台詞があるが、ニセモノの宝物をめぐって右往左往する人間たちの愚かさが強調されている。
1941年製作/101分/アメリカ
原題または英題:The Maltese Falcon
監督:ジョン・ヒューストン
製作:ハル・B・ウォリス
原作:ダシール・ハメット
キャスト:ハンフリー・ボガート、メアリー・アスター、ピーター・ローレ、シドニー・グリーンストリート、ウォルター・ヒューストン
☆☆☆3
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