1970年の幻のインディーズ映画。
「忘れられた小さな傑作」と賛美された、バーバラ・ローデン監督・脚本・主演のデビュー作にして遺作となった『ワンダ』。 70年代アメリカ・インディペンデント映画の道筋を開いた奇跡の映画。
1970年ヴェネツィア国際映画祭最優秀外国映画賞を受賞するが、その名声とは裏腹にアメリカ本国ではほぼ黙殺される。フランスの小説家・監督のマルグリット・デュラスはこの映画を「奇跡」と絶賛し、配給することを夢見ていると語る。デュラスの夢を実現すべくフランスの大女優イザベル・ユペールは配給権を取得しフランスで甦らせた。マーティン・スコセッシ監督設立の映画保存組織とイタリアのファッションブランドGUCCIの支援を受けプリントが修復される。その後、ニューヨーク近代美術館で実施された修復版上映会は、行列が出来るほどの大成功を収めた。本作の熱烈な支持者であると公言するソフィア・コッポラ監督が自ら作品を紹介、観客の中にはマドンナの姿もあったという。
と、2022年日本で公開された時の公式ページにある。
バーバラ・ローデンはエリア・カザンの妻であり、彼からの独立宣言とも言うべき本作を残し、癌により48歳の生涯を終える。
16ミリで撮影された粒子の粗い映像。ペンシルベニアの炭鉱町に住むワンダは、自分の居場所を見つけられずにいる主婦。炭鉱町の殺風景なボタ山を白いパンツとブラウスを着てロングショットで歩く女性が長々と映し出される。赤ちゃんが泣いているのに構わずソファで寝ていた女だ。ワンダは、知り合いの老人にお金を貸してくれと頼む。裁判所で、夫から「子育ても家事も何もしない女だ」と離婚を申し立てられ、ワンダはあっさり承諾する。縫製の仕事をもらおうとするが、「君は縫うのが遅くて雇えない」と言われてしまう。街をフラフラと彷徨うワンダは、バーでビールを奢ってくれる男と寝て、翌朝、男に捨てられる。そして映画館で財布を盗まれ一文無しになり、深夜にバーでデニスと名乗る小悪党と知り合う。その日暮らしのワンダは、そのデニスと一緒にいるうちに犯罪の片棒を担がされることになる。
目的も生きる意欲も何もないワンダという女性。置いてきた子供にも未練はなさそうだし、愛や恋にも興味なし。これまで何も出来なかったのだろう。デニスに犯罪を手伝えと言われても、「私には出来ない」と言うばかり。それが、デニスが相手と争っているところを拳銃を拾って相手を脅すことが出来た。、デニスから「よくやった」と、おそらく人生で初めて褒められる。そんなデニスも銀行強盗で捕まって殺されてしまう。そしてまた男に誘われ襲われそうになって逃げ出して、フラフラと街を彷徨っているところで映画は終わるのだ。
ドキュメンタリーのような生々しい映像。何者でもないワンダの無力感。ボサボサの髪に化粧っ気のない姿。男に引きづられて生きているだけの女。自分を初めて認めてくれた男が殺され、哀しみの目で見つめるワンダの顔。ロード・ムービーの形式を取りながら、女の哀しい実存を描いた身につまされるような映画だ。
1970年製作/103分/アメリカ
原題または英題:Wanda
配給:クレプスキュールフィルム
監督・脚本:バーバラ・ローデン
撮影:ニコラス・T・プロフェレス
編集:ニコラス・T・プロフェレス
制作協力:エリア・カザン
キャスト:バーバラ・ローデン、マイケル・ヒギンズ、ドロシー・シュペネス、ピーター・シュペネス、ジェローム・ティアー
写真引用(C)1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS
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