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2025年08月23日14:46

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「妖刀物語 花の吉原百人斬り」内田吐夢〜豪華なセットと見事なクレーンショット〜

随分と大仰でえげつないタイトルだが、歌舞伎の名作『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』を下敷きにしている人情もの。溝口健二ほか多くの監督と仕事をしている依田義賢が緻密な脚本を書き、『飢餓海峡』ほか日本を代表する数々の作品を撮った内田吐夢が監督。東映撮影所のセットで撮影した日本映画の実力が感じられる作品。

生まれつき顔に大きな痣がある実直な商人が、吉原の遊女にたぶらかされた末、ついに怒りを爆発させる。ラストの吉原での大立ち回りは、クレーンを使いながら桜吹雪が舞う見事なショットになっている。

遊郭・吉原を舞台にしたNHK大河ドラマ『べらぼう』も放送中だが、吉原には社会からドロップアウトした様々な人間たちが寄せ集められ、そこに様々なドラマが起きる。次郎左衛門〈片岡千恵蔵〉は、顔に痣があるばかりに赤子として寺の門前に捨てられ、絹商人として店は大きくしても、見合い相手から何度も断られている。店の者たちからはいい旦那様と慕われているが、嫁をとれず跡取りを残すこともできない。江戸に行った折に誘われるままに初めて吉原の門をくぐるが、花魁たちは痣を気持ち悪がって相手をしてくれない。そんな中で、深川の岡場所(非公認の遊女屋)の取り締まりによって御上から下げ渡されたお鶴〈水谷良重〉を、遊郭の主人〈三島雅夫〉は玉鶴と名付けて相手をさせる。玉鶴は「心の中まで、痣があるわけじゃないだろう?」と次郎左衛門の痣を笑い飛ばす。初めて女性に受け入れられた次郎左衛門は、すっかり玉鶴を気に入り吉原に通い詰めるようになる。玉鶴はバカにされていた花魁たちを見返すために、「松の位の太夫になりたい」と語り、その願いを叶えてやり、いずれは身受けしてやると次郎左衛門は言うのだった。田舎者の金を持っている商人から金をむしり取ろうと、主人の三島雅夫と女将の沢村貞子は法外な金を請求し、玉鶴を太夫にしてやるのだった。しかし、地元で雹が降り、その自然災害で蚕が死に、原材料不足から絹織物産業は危機に陥る。事業の立て直しに尽力する次郎左衛門だったが、資金繰りが厳しくなり、吉原にも行けなくなる。最後に自分が捨てられていたときに添えられていた親の形見の守り刀を売って商売の建て直しを考える。しかし、その刀は徳川家に祟りをなすとされる禁刀・村正で、誰も買い取ってくれない。絹問屋仲間から千両の手形を出してもらうが、「吉原に近づかない」という条件を付けられる。玉鶴の太夫の披露目を延ばしてもらおうと次郎左衛門は主人に掛け合うが、金が払えないなら帰れと言われてしまう。そして、玉鶴からも、「太夫にしてくれるなら誰でも良かった」と冷たく見放されてしまう。さらに絹問屋仲間からも、吉原にいるところを咎められ、千両の手形も返すしかなくなる。

地元に帰り、店の若い二人を結婚させて跡取りを任せ、自分は上方に出て一からやり直すと告げる次郎左衛門。季節は春、桜が満開。吉原では、玉鶴あらため八ツ橋太夫の披露目の花魁道中が行なわれていた。それを見ていた編み笠を被った次郎左衛門。この豪華な花魁道中は、次郎左衛門からむしり取った金で行われていると笑い者にされているのを聞き、刀を持って吉原の者たちに斬りかかるのだった・・・。

最初の屋形船で次郎左衛門が見合いをするシーンの舟の移動と川舞台での華やかな芸子たちの舞い。舟が何艘も夜の川辺を行き交う場面が美しい。また、玉鶴には栄之丞(木村功)というヤクザ者の男がいたのだが、玉鶴が太夫になるのを邪魔しないために旅に出るから「金をくれ」と言ってきて、吉原の外れで殺されてしまう場面がある。川の中でヤクザ者たちに取り囲まれて、遠くに吉原の光が見える。その光と闇の描き方も見事だった。多くのエキストラや役者たちを動員しながら、遊郭・吉原の世界を豪華に描き込んでいる。セットの美術や華やかな衣装など日本映画界の勢いがあった頃の見事な作品と言えるだろう。


1960年製作/109分/日本
配給:東映

監督:内田吐夢
脚本:依田義賢
企画:玉木潤一郎
撮影:吉田貞次
美術:鈴木孝俊
音楽:望月太明吉
録音:佐々木稔郎
照明:中山治雄
編集:宮本信太郎
キャスト:片岡千恵蔵、水谷良重、水野浩、松浦築枝、沢村貞子、三島雅夫、片岡栄二郎、青山京子、岡村文子、木村功、原健策、千秋実、星十郎、利根はる恵、高橋とよ、花柳小菊、千原しのぶ、霧島八千代、玉喜うた子、飛鳥井かほり、松風利栄子、江崎ひで子、中村時之介、尾形伸之介、凰衣子、桜川忠七、同社中、加藤浩、阿部九洲男、北龍二
☆☆☆☆4
写真引用コピーライト東映
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