ジャン=ピエール・メルヴィルの映画というよりもこれは明らかにジャン・コクトーの映画だ。ジャン・コクトーの愛と生と死の世界観が反映されている。同性愛があり、姉と弟の近親相姦的な愛が濃厚に描かれている。
かつてこの映画を見た記憶はあるのだが、最初の雪合戦の場面しか覚えていなかった。放課後の中学校の校庭で子どもたちが雪合戦をして遊んでいる。その美しい光と影のショットと子どもたちの躍動。するとポールという少年がタンジュロスという少年が投げた雪玉が胸に当たって倒れる。友達のジェラールは雪玉に石が入っていたと言うのだが、ポールは自分が走ってきたせいだと教師に告げる。タンジュロスは自分がぶつけた雪玉でポールが倒れたことをまったく気にしていない。校長に経緯を問われると「ウンザリだ」と言って悪態をついてコショウを校長に投げつける。そして退学処分になる。傲慢な少年だが、ポールはこのタンジュロスに同性愛的な感情を持っているようだ。美しいタンジュロスが舞台で女装した写真を宝箱にいつまでもしまっているのだ。ポールは雪玉を胸に受けて、愛に貫かれたのだ。
エリザベットとポールは病気の母を看病しながら狭いアパートで暮らしている。いつも二人でいる姉エリザベットと弟ポールは喧嘩ばかり。気の強い姉はいつも怒り散らしている。エリザベットが2週間前から練習している足を高く上げる仕草が彼女のアクティブさを表現する。それでも弟が病気で寝ていると、「かわいい弟(mon chéri モン シェリ)」と言いながら弟の胸に耳をつけて心音を聴く。姉と弟の部屋は二人の王国だ。二人はベッドを並べて暮らしている。「この部屋は二人の甲羅。二人はここでひとつの体を共有するがごとく暮らしていた」とジャン・コクトーのナレーションが入る。そして二人の間には、二人だけの宝物があり、二人で眠り、二人で「夢想の国へと出発」することを大切にしていた。
寝ていても夢遊病のように動き回るポール。あるとき、姉と弟が喧嘩をしていていると部屋で死んでいる母を見つける。「死」はこの映画全体を支配している。エリザベットはポールの病気が悪化して死んでしまうことをいつも怖れているし、ポールも自らの死を怖れている。療養をかねてジェラールと叔父さんと姉と弟は初めての海へと行く。狭い寝台車のベッドで寝る二人。2階のベッドから1階で眠る弟を見続ける姉。ホテル浴室に喧嘩しながら一緒に入る二人。子供にイタズラしたり万引き遊びをする3人はまさにはしゃぐ子どもたちだ。エリザベットはモデルの仕事をするようになり、アガットという友人を母の部屋に住まわせようと連れてきた。アガットは、女装したタンジュロスそっくりだった。初めてアガットを見るポールの驚きの顔のアップが入る。
エリザベットは金持ちのミカエルと結婚する。エリザベットに思いを寄せていたジェラールの恋は破れる。ピアノを弾きながらミカエルがラブソングをエリザベットに歌う場面がある。そして部屋が18もある大きな屋敷をみんなに案内するミカエル。そこに大きなガラクタ置き場になった未完成のホールがあった。印象的な俯瞰ショット。気に入ったポールは、「幽霊は?」とミカエルに聞く。「だが子供部屋の精霊が見逃さなかった」というナレーションとともに、あっさりミカエルが結婚式直後に自動車事故死したことが告げられる。死は姉と弟につきまとって、この屋敷に連れてきたのか?未亡人になったエリザベットとポール、ジェラールとアガットもこの屋敷で一緒に暮らすようになる。ここから物語は急展開していく。
ポールはアガットへの愛を自覚し手紙を書く。アガットは一目見たときから愛してしまったポールへの思いが溢れ出す。その二人の思いを聞いたエリザベットは、驚くべき行動に出るのだ。手紙はポールの過ちからアガットに届かない。その手紙を見つけて破り捨てたエリザベットは、アガットにポールのことを諦めてジェラールと結婚するように勧め、ポールにはアガットはジェラールが好きだと嘘を告げるのだ。二人を愛を阻んだエリザベットは、ポールを失いたくなかった。弟への愛があったのだ。ジェラールとアガットは結婚して屋敷を出て行くのだが、ここでジェラールが偶然会ったタンジュロスが登場し、彼から毒薬をもらって来るのだ。タンジュロスというポールが愛した男は、死の使いか悪魔か。タンジュロスは、アガットとなってポールの前に現れたのに、姉の愛のためにアガットとの恋を阻まれたポールは、毒薬を飲んで自殺する。ラストは、またしても窓の外の雪とエリザベットの夢の幻想。森の中でビリヤード台をベッドにして眠るポールの姿。ポールの元に駆けつけたアガットだが、姉は弟に呼びかけて二人で夢想の国へと出発するのだ。そしてエリザベットも拳銃自殺して終わるのだ。凄まじいラストである。
姉と弟の禁断の愛を「子供部屋の精霊」とナレーションでは語られる。「子供部屋の精霊」は、エリザベットの結婚相手のミカエルを死に追いやり、ポールとアガットの恋をエリザベットを操って邪魔させる。姉と弟が同じ部屋にベッドを並べて眠り、ともに夢想の国へと出発していたことは、死の世界(精霊)とつながっていた。眠り=夢遊病=夢想=死。そしてその子供部屋の死の精霊は、大きな屋敷にもやってきていた。ポールが自分の部屋にして寝ていた巨大なホールは、精霊の住処であり、そこで話されるエリザベットとポールの声は反響して木霊していた。
アンリ・ドカエのカメラは、光と影を駆使しながら、アパートの狭い部屋と屋敷の閉ざされた空間や階段を効果的に使いながら、美しく妖しげに描いている。そんななかで、最初の雪合戦のシーンが夢のように美しく感じられる。映画史に残る傑作である。
1950年製作/107分/PG12/フランス
原題または英題:Les Enfants Terribles
配給:リアリーライクフィルムズ
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
原作:ジャン・コクトー
脚本:ジャン・コクトー、ジャン=ピエール・メルヴィル
撮影:アンリ・ドカエ
衣装:クリスチャン・ディオール
編集:モニーク・ボノー
音楽:ポール・ボノ
ナレーション:ジャン・コクトー
キャスト:ニコル・ステファーヌ、エドアール・デルミ、ルネ・コジマ、ジャック・ベルナール、ロジェ・ガイヤール
☆☆☆☆☆5
(C)1950Carole Weinkeller (all rights reserved) Restauration in 4K in 2020 . ReallyLikeFilms
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