「現代のフランスを代表する映画作家にして、日本劇場未公開の異才アラン・ギロティの3作品」が劇場公開された。「2001年の第54回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出された中編第2作目が、ゴダールにその年の“カンヌの最高作”と評され、話題となったアラン・ギロディ監督。これまでに長編7作品を監督(公式HPより)。
まず見たのは、2013年の第66回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞とクィア・パルム賞を受賞し、ギロディの名を世界的に大ブレークさせた『湖の見知らぬ男』。
かなり露骨な性描写があるのでビックリした。しかも「ハッテン場」と言われる男同士のカップルが出会う場所の湖畔が舞台。男性性器がたくさん映し出される。夏の美しい湖畔の景色。森と湖。湖畔の空き地に何台かの車が止まっている俯瞰ショットが何度も出てくる。一台の車が木の横に止まり、主人公の若い青年フランク(ピエール・ドゥラドンシャン)が湖畔の砂浜にやって来る。日替わりはすべてこの車が止まる俯瞰ショットが使われる。湖畔にやってきた男たちは、砂浜で寝転んでいる男たちを物色し、気に入った相手がいれば声をかけて隣に座る。ある者は湖で泳ぎ、ある者はやってくる男を待っている。真っ裸で寝転んでいる者が多い。フランクは青年ミシェル(クリストフ・パウ)と出会い惹かれていく。男たちはお互い惹かれた者同士、森の中に入り、性を楽しむというルールになっているようだ。中にはそんな二人の様子を覗き見して自慰している男もいる。明るい太陽の光の下、湖と森の美しい自然の中で開放的に性を楽しむゲイたちが映し出される。
イケメンで魅力的な男ミシェルは最初は別の男と一緒にいた。フランクは意中のミシェルと一緒にいることが出来ず、裸にもならず、ナンパもしないで、いつも一人で湖をただ眺めているだけの小太りの男アンリ(パトリック・ダスマサオ)と親しくなる。そしてここに来る度にアンリと会話をするようになる。しかし二人は一緒に森に行ったりはしない。ただ会話するだけの仲だ。そしてある日の夕方、湖で泳いでいるミシェルともう一人の男の姿をフランクが見つける。やがてミシェルがもう一人の男を湖に沈めている現場を目撃してしまうのだ。殺人だ。しかし、翌日になっても死体が見つかったという話は聞かない。しかし、車を止める場所には赤い車だけがいつも残っている。殺された男の車だ。浜辺にバスタオルも放置されている。しかし、誰も騒がないし、いなくなった男のことを警察に告げたりもしない。昨日と同じように男たちは愛と欲望に夢中だ。フランクは、ミシェルとすぐにカップルになり、森の中で二人は楽しむ。湖にも入る。そして欲望をぶつけ合う恋人同士の関係になっていくのだ。好きになった男が殺人犯だと知っていながら、付き合うようになるフランク。その場だけの関係だからか・・・。日常的には知らない者同士。欲望のままに二人は肌を重ねる。どんどん惹かれ合っていく二人。フランクはもっと一緒にいたいと自宅にミシェルを誘うが、ミシェルはすぐ飽きてしまうから、この場だけの関係にしようと断わる。「見知らぬ男」であろうとするミシェル。
そしてあるとき、湖で死体が見つかった。さすがに男たちはほとんどいなくなる。いつもの車を置く場所もガラガラだ。やがて刑事がやって来て、ゲイたちに質問をする。フランクもミシェルもいろいろと聞かれる。殺された男はミシェルの元恋人だったらしい。フランクとミシェルの関係がぎこちないものになっていく。そして再び事件が起きる・・・。
警察に「遺体が見つかってから二日もたつと、何事もなかったように君たちはまたやってくる。おかしいと思わないか?」と聞かれ、フランクは答える。「生きることはやめられないから」と。日常から切り離された特別な場所。そこは欲望が剥き出しになる場所だが、なかには愛情や心の癒やしを求めに来る者たちもいる。ミシェルという男は欲望のために「見知らぬ男」であり続けようとする。一方、フランクやアンリは日常の延長として、ここに心の潤いや癒やしの出会いを求めている。その違いが悲劇を生んでいく。
ゲイのカップルであることが、この場所をより特別なものにしているように思う。彼らにとって、この場所だけが自らの欲望に忠実になれる楽園なのかもしれない。美しい森と湖がそんなハッテン場であることのギャップにまず驚かされる。隠微さはまるでない大らかさだ。だからこそ、「見知らぬ男」が殺人者であっても平気で愛せるのか?しかし殺人事件が起きることによって、余所者である警察がやって来るようになり、特別な楽園ではなくなってしまう。「見知らぬ男」は「見知らぬまま」ではいられないし、秘密を知ってしまうのだ。現実が介入してくる。そんな楽園で、欲望のままに裸になれないアンリという男の存在が、少し哀しく愛おしい。アンリは秘かに愛するフランクのためにミシェルに忠告することによって、悲劇が起きるのだ。
2013年製作/97分/フランス
原題または英題:L'inconnu du lac
配給:サニーフィルム
監督・脚本:アラン・ギロディ
製作:シルビー・ピアラ、ブノワ・ケノン
撮影:クレール・マトン
美術:ロイ・ゲンティ、フランソワ・ラバルト、ローラン・ルネッタ
編集:ジャン=クリストフ・イム
音楽:フィリップ・グリベル
キャスト:ピエール・ドゥラドンシャン、クリストフ・パウ、パトリック・ダスマサオ、ジェローム・シャパット、マチュー・ベルビッシュ、ジルベール・トレイナ、エマニュエル・ドマ、セバスチャン・バダチャウイ、ジル・ゲリン、フランソワ・ラバルト
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(C)2013 Les Films du WorsoArte / France Cinema / M141 Productions / Films de Force Majeure
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