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2025年04月04日15:02

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「陪審員2番」クリント・イーストウッド〜罪と罰について〜

クリント・イーストウッドは、「罪」と「罰」というものをずっとテーマにしてきた監督かもしれない。『ミスティック・リバー』では、罪のない男を間違って殺してしまった過ちを描いていたし、『トゥルー・クライム』はまさに冤罪を晴らすための死刑が執行される直前までの物語だったし、『チェンジリング』は、母親が徹底して不正と戦う映画であった。人間は間違いを犯す。社会には不正もあるし、冤罪もある。イーストウッドは理不尽な怒りという感情をフックにしながら、法という規範を超えて罪を罰する私的制裁や復讐というテーマを好んで取り上げる。

さてこの映画は、タイトルにある通り裁判劇である。陪審員たちによる裁判モノと言えば、『十二人の怒れる男』(1957/シドニー・ルメット)という名作がある。これは日本でも翻案され映画化されたし、舞台化も数多くされている密室劇の傑作である。12人の陪審員たち全員一致で有罪になると思われた事件が、ただ一人、無罪と主張した陪審員の意見から、議論によって固定観念が覆されていく陪審員たちの討論劇である。この映画は、『十二人の怒れる男』が明らかにベースになっているし、最近見たフリッツ・ラングの『緋色の街/スカーレット・ストリート』(1945)という作品とも似ている。『スカーレット・ストリート』では、罪を犯した男の代わりに別の人間が死刑にされてしまう。その真犯人である男は、列車に乗り合わせた記者たちから「罪は逃れられない」と言われ、自らも罪に苦しみ、一生その罪を背負って屍のように生きることになる。死刑にはならなかったが、自ら侵した罪に罰せられるのだ。この映画でも、主人公のジャスティン(ニコラス・ホルト)は、弁護士から「ケンドルさんを死に至らせた人物は裁きを受けるべきだ。その悪魔のような男は今も野放しだ」と言われる。罪とは何か?罰とは?正義とは?真実とは?が映画では問われ続ける。

冒頭、妊娠した妻を喜ばせるために黒いもので目隠しして、生まれてくる赤ちゃんのために改装した部屋を夫が見せる場面から始まる。夫婦のハッピーな場面ではあるが、「目隠し」して誘導するという始まりからして、なんだか不吉だ。「目隠し」は死刑執行を連想させるし、彼は誰に「目隠し」をして、真実をどこへ誘導しようとしていたのか?また友人を呼んで妊娠の報告をするパーティー場面も、2人が高いテラスのような場所から友人たちに挨拶することの不自然さを感じた。なぜ「高み」からの挨拶なのか?そんな違和感を持たせながら、映画はある男女の諍いによる事件の裁判劇へと突入していく。そして陪審員に選ばれた男ジャスティンが事件と深く結びついていることが次第に明らかになっていく。良心の呵責と真実をめぐる議論。最後は担当検事のトニ・コレットが「真実」と「正義」の間で揺れ動く。自らの地位を守るのか、過ちを認めるのか。善良なる市民の家族の平和と冤罪で罰せられる不正義。チンピラでどんな悪徳な人間でも冤罪で罰せられてもいいのか?悪意がなくても、誰もがこういう事態に巻き込まれ、引き裂かれる可能性はあるという「罪と罰」に関する映画だ。

本作はU-NEXTでネット配信されたが劇場公開されていない作品。94歳のクリント・イーストウッドは、これが最後の作品になってしまうのか?もう1本ぐらい観たいところだ。


2024年製作/114分/アメリカ
原題または英題:Juror #2

監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド、ティム・ムーア、ジェシカ・マイヤー、アダム・グッドマン、マット・スキーナ
製作総指揮:デビッド・M・バーンスタイン、エレン・ゴールドスミス=バイン、ジェレミー・ベル
脚本:ジョナサン・エイブラムズ
撮影:イブ・ベランジェ
美術:ロン・リース
衣装:デボラ・ホッパー
編集:ジョエル・コックス、デビッド・コックス
音楽:マーク・マンシーナ
キャスト:ニコラス・ホルト、トニ・コレット、J・K・シモンズ、クリス・メッシーナ、ガブリエル・バッソ、ゾーイ・ドゥイッチ、セドリック・ヤーブロー、レスリー・ビブ、キーファー・サザーランド、エイミー・アキノ、エイドリアン・C・ムーア、福山智可子
☆☆☆☆4

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