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2024年12月06日17:29

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アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの長編デビュー作『アモーレス・ペロス』〜犬のように愛を求めて〜

(C)Lions Gate Films/Photofest/ゲッティ イメージズ

メキシコ映画界の鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの2000年の長編監督デビュー作。『バベル』(2006)で有名になり、『21グラム』(2003)やアカデミー賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)など話題作も多い。

手持ちカメラで人物たちを活写する臨場感あふれるカメラワークが特徴的。じっくり落ち着いてヒキの画面で登場人物たちを映像化するのではなく、日々、夢と欲望を求めて街を動き回り、誰かを見つめ、誰かを探す登場人物たちの表情をカメラは近い場所にいて捉えていく。

メキシコシティーを舞台に3つの物語が進行する。それぞれの登場人物は直接かかわり合わないが、街角で接する。同じ街の同じ時間の中で起きるそれぞれの人生の物語。1つ目の「オクタビオとスサナ」は、貧しきダウンタウンで暮らす若者たちの物語。青年オクタビオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は兄嫁のスサナ(ヴァネッサ・バウチェ)に恋している。兄のラミロ(マルコ・ペレス)はスーパーで働く一方、強盗をしながら遊んでいるチンピラで、赤ん坊もいるのだが妻のスサナに冷たく暴力をふるう。闘犬で金を稼ぐ弟のオクタビオは、金を貯めてスサナと別の街へ逃げようと誘う。闘犬たちが戦う激しい描写。相手に吠え掛かる獰猛な闘犬は、飢えた彼らそのものだが、負ければ血だらけになって食い殺される。オクタビオは闘犬で勝ち続けて大金を手にしたものの、恨みを買って愛犬を銃で撃たれ、その男をナイフで刺して車で逃亡。スサナとの駆け落ちの約束を実現できないまま、車で逃げる途中、街中で大事故を起こしてしまう。

第2話「ダニエルとバレリア」は、スペインから来た金髪の人気スーパーモデルのバレリア(ゴヤ・トレド)が、1話のオクタビオの起こす交通事故に巻き込まれて、重症で歩けなくなる。バレリアは雑誌編集長ダニエル(アルヴァロ・ゲレロ)と不倫しており、新居の部屋で暮らし始めたばかりだった。部屋の窓からは巨大なバレリアのセクシーな広告がビルに掲示されている。車椅子生活となったバレリアは、モデルの仕事を失い、愛犬が部屋の床下の穴に入り込んだまま出てこれなくなる。愛犬の泣き叫ぶ声、床下のネズミなども描写され、ここでも犬が死の危機に瀕する。この愛犬もまたモデルのバレリアの人生そのもの。床下の愛犬はダニエルによって救出されたが、ついに脚を切断することになったバレリア。部屋の窓からは広告が取り払われた殺風景なビルが見える。

第3話「エル・チーボとマル」は、元大学教授ながら極左過激派として活動して投獄され、今は浮浪者のような格好でたくさんの犬を引き連れながら、リアカーでゴミを集めて暮らしている男、エル・チーボ(エミリオ・エチェヴァリア)の物語。廃墟のような場所で犬と暮らすエル・チーボは、殺し屋をしている。第1話、第2話で犬を連れて街を歩くエル・チーボは度々登場しており、いきなり銃で人を殺す場面もある。第3話では、「この男を殺してほしい」という依頼場面があり、エル・チーボはその男を何日も尾行しながら、人目に付かずに殺すタイミングを計っている。ある時、第1話の交通事故現場に居合わせたエル・チーボは、オクタビオの怪我した闘犬を家に連れ帰り、看病して元気にしてやる。かつて家庭を捨て、娘マル(ルルデス・エチェヴァリア)を捨てた過去を後悔し、娘を遠くから見つめる日々。そして娘の家に忍び込んで家族写真を盗んで、その写真に自分の写真を貼り付けたりしている。看病して元気になった闘犬だったが、あるときエル・チーボの飼っていた犬たちをみんな食い殺してしまう。衝撃的な犬たちの死骸。食い殺すことを運命づけられた闘犬の哀しさ。エル・チーボはターゲットの男を捕まえて殺さず家に拘束し、依頼者である腹違いの兄と対面させ、二人で決着つけろとピストルを置いて家から出ていく。そして、伸びた髪と髭を剃り身綺麗にして娘のマルの家に再び忍び込み、ベッドに手に入れた現金を置き、留守番電話で自分が本当の父親だと名乗る。そして犬とともに一人街を出て行くのだった。いつか娘の元に戻ってこれるのかどうかはわからない。

また第3話で銀行強盗をする第1話のラミロが登場し、刑事にピストルで撃たれて死亡する。兄ラミロの葬式で再会したオクタビオとスサナ。オクタビオは交通事故で足を怪我しながらまだ生きていた。そして再びスサナと駆け落ちの約束を果たそうとする。「バス停で待っているから」と伝えるが、スサナは約束の時間に現れずオクタビオは一人涙する。

この映画のタイトルの『アモーレス・ペロス』とはスペイン語で「犬のような愛」という意味。3話とも犬が絡んでおり、犬は登場人物そのものとも言える。獰猛に牽制し合い、殺し合い、穴に落ちて抜けられなくなる。あるいは捨てられて拾われるが、最後は無残に殺される。殺すことを定めとして生きた犬は、その呪縛から逃れられない。そして、犬のように誰かを愛し、その愛はことごとく報われない。オクタビオの愛も、バレリアの愛と夢も理不尽な事故で打ち砕かれ、エル・チーボは一度捨てた娘と父として再会出来ない。喪失した愛はなかなか埋められない。ラストシーンは大地と空が広がるロングショットで犬と街を去りゆく男のバックショットで終わる。街中の薄暗く狭い部屋ばかりの映像が多かった中で、ラストの広い大地のロングショットが効果的。

エンドクレジットに出る「ルチアーノへ。我らもまた失われし者ゆえ」とは、生まれたばかりの男の子を失った監督自身の体験からのメッセージだったそうだ。


2000年製作/153分/メキシコ
原題または英題:Amores Perros
配給:東京テアトル

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作総指揮:フランシスコ・ゴンザレス・コンペアン、マルタ・ソサ・エリゾンド
脚本:ギジェルモ・アリアガ
撮影:ロドリゴ・プリエト
美術:ブリジット・ブロシュ
衣装:ガブリエラ・ディアケ
音楽:グスターボ・サンタオラヤ
キャスト:エミリオ・エチェバリア、ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴァネッサ・バウチェ、ゴヤ・トレド、アルヴァロ・ゲレロ、ルルデス・エチェヴァリア
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