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2024年09月04日05:10

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発名しました、「月見バーガー」。

 発明じゃありません、発名の話です。業界用語でネーミングと申します。

「月見バーガー」という商品がありましてね。えー、マクドナルドです。かれこれ30年前からあります。いまとなると
「いい名前だなあ」
と思うでしょう。ところがこうなるまでが大変だった。時が育てるとも言えるんですね。

            ○

「ベーコンエッグ・バーガーをマックでも販売するんだけど、マックのオリジナルに仕立てたいので、いい名前がないかなあ」
という依頼がCM製作会社からありました。

「だってさあ、ベーコンエッグ・バーガーは中学生のお昼の定番で、他のバーガー屋でとっくに人気なんだよ」
「だからさあ、ベーコンエッグ・バーガーとドーンと距離を取れる、新しい名前にすれば大きく売れるんだ」

 話を聞くとだんだんネラ(狙いのこと)が読めてくる。
 あーあー、それでもなお、だ。
 CM製作会社に発注した電通のチーフCDが、ま、延々熱く語るのです。マックは、電通にとっても巨大クライアントなので
「ハッ、ハッ、ハー」
とみなひれ伏して聞くのですね。
 後から聞くとそのチーフCDは電通の三悪と言われるくらい強引な人でウカウカしてられないんだそう。(I津さんです)
「どーも違う世界じゃないかな、あの人は」
と言うと次の日からいなくなるそうです。

 ぼくは書きはじめる。いくつもいくつもね。それで、三悪のチーフに見せるとこれが
「そーかあ、うーん、ま、いいのかなあ」
どうにも結論が出ない。
 で、椎名町の通称・宇宙ステーションこと商品開発室に行くのですね。
 シューン、ステンレスの自動ドアが開き、待っていたのは藤田完氏。伝説の創業者、藤田田氏の次男です。この人も強引。強引グ・マイウエイだ。やにはに、
「どれも何かが足りないんだ、わかるか、言ってみろ」
 シーン。
(何もはじめっからそう飛ばさないで)

 しょうがない、ここはぼくがなんとかするか。
「愛情ですね」とぼく。
「うまいこと逃げるな」と完氏。
(どうやら引いたぞ、先に進もうよ)
「ムムムッ…これだな感じるのは」
 鉛筆で大きく書いた「月見バーガー」に行き当たった。

            ○

 本当のところ、周りの評判はあまり良くなかった。
 広告業界は一応にモダニズムだからね、良いわけはない。
 藤田完氏は長い間ロス暮らしで、音楽活動をやっていた。それで日本語にグッときたのではと製作会社のPは推測しておりました。だが、しかし、判断は当たっていた。「月見バーガー」はすっかり定番になったからね。

            ○

 そこからはじまった「月見バーガー」ですが、この秋「月見ハンバーグ」と「月見パイ」と出揃い、「月見」と言う商品グループさえできそうじゃありませんか。特に「月見パイ」のパッケージなんて(画面からだけど遠目でも)素晴らしい。

「うーむ、すごいなあ」

 ぼくが開発したネーミングで市場に残っているものはいまやそう多くはなくて、しかもここまで大きくなるとは。
 大したものだ。感動ですね。名付けた親から、我が子をほめたたえよう。

「30年続いたのだから、30倍のギャラを貰えばよかった」
などと周りは言うわけですが、致し方なし。
「今も名前は生きている」で、よしとするかです。
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