鈴木清順の1956年デビュー作。鈴木清太郎という本名でクレジットされており、鈴木清順と名乗るようになったのは、 『暗黒街の美女』 (1958年)からのようだ。鈴木清順は松竹の大船撮影所で助監督として映画界に入り、1954年に製作を再開した日活に移籍。デビュー作は人気歌手の青木光一の歌謡映画のプログラムピクチャー。「港の乾杯」は、青木光一のヒット曲であり、映画の中で流しの歌手として出演している。脚本に『キューポラのある街』の 浦山桐郎が参加しており、助監督には蔵原惟繕の名前がある。
海の男の元船乗りの兄( 三島耕 )と競馬の騎手の弟( 牧真介 )の兄弟愛の物語であり、弟思いの人情味ある兄が弟を救う。船員たちが集まる酒場は賑わいと活気があり、流しの青木光一が歌を歌い、いつも船員たちの笑顔で溢れている。店の看板娘( 天路圭子 )が明るく男たちをあしらっている。そんな彼女が思いを寄せるのは、騎手の弟・牧真介なのだが、競馬場の世界は金と欲望にまみれた別の世界が広がっていた。庶民の酒場と競馬場、二つの場所が対照的に描かれる。
騎手の牧真介は競馬場で年上の謎の美女・南寿美子と知り合いになり、ナイトクラブで二人で勝利を祝おうと誘われる。生バンドが演奏するゴージャスなクラブで踊るふたり。いつもの酒場では、みんなで勝利の祝宴をしようと看板娘がケーキを買って彼を待っていたのだが、最後まで現れない。南寿美子は、地元の暗黒街の顔役・芦田伸介の女だった。牧真介は、南寿美子との仲が発展してご機嫌になるが、ある日、「俺の女が欲しければ、競馬で八百長をやれ」と芦田伸介に脅され絶望する。一度は落馬して芦田伸介を儲けさせる牧真介だったが、南寿美子との愛と、芦田伸介からの八百長の圧力の間で苦悩していく。最後は、兄の三島耕が弟の助けに入り、芦田伸介を殺してしまう。
悪役の芦田伸介の存在感、八百長を迫る場面の催眠術をかけられたようなモンタージュ、夜の無人の駅での二人、アジトの倉庫のセットなど見どころもあるが、競馬のシーンのチープな合成など、それほど全体としていい出来ではない。コロンビアトップ・ライトが競馬の予想屋で登場している。ストップモーションのような遊びのカットもある。
1956年製作/65分/日本
原題:Victory is Ours
配給:日活
監督: 鈴木清太郎 (鈴木清順)
脚本:中川順夫、浦山桐郎
製作:浅田健三
撮影:藤岡粂信
美術:佐谷晃能
音楽:平河英夫
キャスト:三島耕、牧真介、南寿美子、 芦田伸介 、天路圭子、青木光一、菅井一郎、佐野浅夫、雪岡純、山之辺閃、永井柳太郎、久松晃、武藤章生、青木富夫、野口豊、衣笠一夫、トップ、ライト、河津清三郎
☆☆☆3
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