平田オリザが日本近代文学者50名を選んで、中学生でも分かるような平易な短い解説で紹介している。朝日新聞読書面の連載「古典百名山」を元に加筆修正したものだ。高橋源一郎の「日本文学盛衰史」を原作として平田オリザが戯曲化した青年団の舞台(青年団『日本文学盛衰史』)を観に行ったときに、平田オリザ本人からサイン入りで買い求めたものだ。
まだ百数十年の歴史しかない日本の近代文学を総ざらいしている。簡潔な文章と代表作の一部を引用して作家を解説している。あまりに短く物足りなくもあるが、それぞれの作家の仕事や文学史的な位置を確認する意味では役立つ本だ。
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明治の半ば過ぎまで、1890年代半ばまで、新しい国家の言葉をつくることと、新しい文学の言葉をつくることは矛盾するものではなかった。二葉亭四迷がロシア語を学んだのも仮想敵国ロシアを研究するためだったし、森鴎外が軍人と作家を兼ねたことも矛盾するものではなかった。やがて20世紀を迎え、人々は日本語で政治を語り、経済を論じ、ラブレターを書き、痴話ゲンカをできるようになった。人々は「悲しい」「寂しい」と書かなくても、風景を描写することで、その主体の「内面」(=気持ち)を表すことができるようになる。近代文学の誕生だ。そして、その瞬間から、言葉は政府の敵となる。政治家たちは、その描写が、内面を表しているのか不安でたまらなくなったから。
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50人の作家
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シナリオライターであった平田オリザの父は、息子を小説家にさせたかったらしく、彼が若い頃に自転車で世界を放浪していた時に、文庫本で様々な詩集や小説を旅先に送ってくれていたそうだ。お陰で平田オリザは、贅沢な形で文学に触れられたという。
先日観た映画『天上の花』で、三好達治が戦争詩を書いて悔恨する場面があったが、各時代の文学者たちが戦争とどう関わったのかが触れられている。というのも、平田オリザの祖父は国粋主義者で詩人で、戦争詩を多くの詩人たちに書かせた同人誌の編集人をやっていたらしいし、叔父は少年向けのSF軍事小説を書いていたそうだ。平田オリザ自身には、自分が祖父や叔父たちのようにならないか、不安もあるという。時代と文学者がどう格闘していったか?という視点から、作品を読むことも面白い。
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