多くの人がネットで指摘しているようにマキマキは巻き戻って早乙女になった。不可逆と巻き戻しがテーマの第7話である。アリスちゃんの猛然とした車のバック運転の異様さに呆気にとられつつ、「唐揚げにレモンをかけることは、不可逆なんだ」と熱く語っていた家森君は、早乙女の名前に戻ったマキさんに「巻き戻ってません?」と何度も繰り返し、エンディングテーマが冒頭に流れた。
このドラマでは「食事シーン」が重要な役割を果たしていることにあらためて気づかされる。初回の「唐揚げにレモン問題」から始まり、2回目の「ブイヤベースと餃子問題」、さらに第3話のすずめちゃんとマキさんの「そば屋でのかつ丼」話、第6話ではマキさんと夫の幹生の鍋シーンで決定的な役割を果たした「鍋敷きになった詩集」問題もあった。そして、第6話の完結編ともいべき今回の第7話は、マキさんと夫が奇妙な再会を果たした後での食卓の「おでん」である。
今回は「おでん」のシーンが重要だった。「おでん」でご飯を食べられることに気づいた二人のヨロコビを語り合う微笑ましいシーンがまず描かれ、マキさんのカルテットメンバー話を受けて、幹生が自らの冒険物語を語り出そうとしたその瞬間、マキさんは「柚子胡椒」を取りに食卓を離れる。いい雰囲気で笑いあい、語り合っていた食卓での二人の会話。そして興に乗って自らの話を披露しようとした瞬間に、その話の腰を折って幹生の物語をさえぎられた。このとき、幹生は何かを悟った。「やはりダメだ」という二人の関係。さらにワインを飲むだとか、飲まないだとかの噛み合わないやりとりが繰り返されるが、不在の1年間の距離を埋めようとした二人の「おでん」の食卓での努力は、マキさんが「柚子胡椒」を取りに行った瞬間に消えた。
それくらい男女の関係は微妙なものなのだ。バスローブを露出狂のように開けて見せて驚かせる夫のギャグを、マキさんは別荘でカルテットメンバーに繰り返していた(第1話)。小声のマキさんに似合わぬその身振りに違和感を感じたものだが、それが今回、夫のネタであったことが示された。あれはマキさんの夫への愛だったのか。再び帰ってきた夫に、マキさんはリクエストする。バスローブの幹生の動作は繰り返され、二人の関係は巻き戻るかに見えた。あの頃のように・・・。ひょっとしたらやり直せたもしれない二人。しかし、「おでん」の食事の「柚子胡椒」のシーンで、決裂は決定的になった。それは最後の抱擁の拒否と握手、さらには詩集の暖炉での焼却というあまりにも変わり身の早い現実的なマキさんへとつながっていく。
カルテットのメンバーでの食事のシーンの言い争いは、微笑ましいものがある。それぞれがお互いの主張をぶつけ合う。些細なことながら、我慢できないことを。それが屈託のない関係というものである。食べながら涙を流すことも、感情をぶつけあうことも、共同生活においてはとても大切なことなのだ。そのことをこのドラマは語っている。だから、「唐揚げにレモンをかけること」、「大切な詩集を鍋敷きにされること」に抗議できない幹生は、話の腰を突然折られても、怒れないのだ。それを察することのでいないマキさんとはやっていけないと思ってしまう。夫婦の巻き戻しは不可能だった。どうしようもない不可逆な時間。
アリスちゃんの落下と気絶。死と間違われつつ物語が展開し、死んだふりをそのまま続けたアリスちゃんは、車を逆回転させ、猿探しに舞い戻る。不思議の国のアリスちゃんの迷走ぶりが今後もなかなか興味深いが、マキさんの夫問題は解決し、カルテットの4人の「片想い」の関係が今後の物語の興味へと移っていく。
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