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2018年10月19日19:51

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宇治川の水と波音-俊成・定家親子の歌

「ちはやぶる宇治の橋守言とはむいくよすむべき水のながれぞ」(283)
久松潜一校注『平安鎌倉私家集−日本古典文学大系80』(岩波書店・1964年)所収「長秋詠藻」p.309より

「浪の音に宇治の里人よるさへや寝てもあやふき夢のうきはし」
佐佐木信綱校訂『藤原定家歌集』(岩波文庫・1931年)p.79より

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藤原俊成・定家親子の歌集を見ていたら、それぞれに「宇治」にまつわる歌があった。

父・俊成の歌は、「幾代」も「住む」橋の「まもり」に、古くから「澄む」宇治川の水について問うている。
子・定家の歌は、夜に響く波音がかきたてる不安な思いを詠っている。

実際に宇治川を見てみなければ、こうした「澄む水」や「波音」も、抽象的な概念であり、そこから浮かぶ情景は、まったくの空想の産物になってしまう。
ひとたび、実際に宇治川を訪れてみると、それは具体的な情景と結びつく。
もちろん、俊成や定家の時代の宇治川は、治水の行き届いた現代の宇治川とは違ったものであったかも知れないが。

以下に、定家の歌についての久保田淳の訳と解説を載せておく。

「浪の音(をと)に宇治のさと人よるさへやねてもあやふき夢のうきはし」
「恐ろしい川波の音に、宇治の里人は、夜寝ても、浮橋から川に落ち込むような、危うい夢を見ることだろう。本歌「住の江の岸による浪よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ」(古今・恋二・五五九 敏行)▽源氏物語・浮舟などの心で詠む。」
久保田淳校訂・訳『藤原定家全歌集(上)』(ちくま学芸文庫・2017年)p.210〜211より


◆宇治橋から見る朝の宇治川(左「朝霧橋」(紅)、右「橘橋」(白)、その奥「喜撰橋」(紅))
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◆喜撰橋から見る夜の宇治川(鵜飼舟による遊覧)
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