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2018年07月08日20:22

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源順-世の中を何にたとえん(2)

「世の中を何に譬へむ朝開(びら)き漕ぎ去(い)にし船の跡なきごとし」(351)
(世間乎何物尓将譬旦開榜去師船之跡無如)
満誓沙弥の歌 『萬葉集(一)』(新日本古典文学大系)所収の「巻第三」より

「家集「源順集」には、応和元年(961)7月11日4歳になる女児を喪い、同年8月6日、また5歳の男児を喪って、無常の思いと物にふれておこる悲しみの涙が乾かず、古万葉集の沙弥満誓が詠んだ歌の中に「世の中を何に譬へむ」とあることをとって、歌のはじめにおいて詠んだ、という歌が10首載っています。」
http://www.geocities.jp/yasuko8787/0x-t6.htm

a.世の中を 何に譬へむ 茜さす 朝日まつまの 萩の上の露(119)
b.世の中を 何に譬へむ 夕露も またできえぬる 朝顔の花(120)
c.世の中を 何に譬へむ 飛鳥川 定なき世に たぎつ水の泡(121)
d.世の中を 何に譬へむ 転寝の 夢路ばかりに 通ふ玉ぼこ(122)
e.世の中を 何に譬へむ ふく風は 行へもしらぬ 峰の白雲(123)
f.世の中を 何に譬へむ 水早み かつ崩れゆく 岸のふし松(124)
g.世の中を 何に譬へむ 秋の野を ほのかに照す 宵の稲妻(125)
h.世の中を 何に譬へむ 濁江の そこにならでも 宿る月形(126)
i.世の中を 何に譬へむ 草も木も 枯行頃の 野べの蟲のね(127)
j.世の中を 何に譬へむ 冬を浅み 降と見るまに けぬる泡雪(128)

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源順(みなもとのしたごう)は、延喜11年(911年)に生まれ、永観元年(983年)に享年73歳で亡くなったとのこと。本人は比較的長生きしたようだが、本人が50歳前後のときに幼い子供を相次いで亡くしているらしい。
本人は万葉集の研究もしていた。そのためか、自らの人生の中でも最も悲しみに沈んでいたであろうときに、万葉の歌の一部を借りて歌を詠んでいる。

「世の中」という古語には色々な意味があるが、ここでは「人の一生」ということだろう。

「人の一生」の短さ、儚さが、まず次のように詠われる。

a.「茜さす朝日まつまの萩の上の露」
(朝日が出るかと待っている間の萩の葉の上の露のようなすぐに消えてしまう。)
b.「夕露もまたできえぬる朝顔の花」
(夕方の露が付くかと思う前に枯れてしまうアサガオのように弱弱しい。)
g.「秋の野をほのかに照す宵の稲妻」
(秋の野を一瞬だけ薄ぼんやりと照らす宵の稲光のように短い。)
j.「冬を浅み降と見るまにけぬる泡雪」
(初冬の雪のように、生まれたかと思う間に亡くなってしまう。)

また、「人の人生」は、「早い川で流される泡のよう」であり(c)、「風に流される雲のように行方の知れぬもの」である(e)。

そのほかの歌からも、それぞれに哀しい「とき」を生きている男の人生観が滲み出ている。

ちなみに、eは「続古今集」に、gは「後拾遺集」に採られたようだ。

◆世の中を何にたとえん
(1)派生歌(2018年07月02日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1967301452&owner_id=2312860

◆沙弥満誓の歌の作為
http://www.geocities.jp/yasuko8787/0x-t6.htm
◆源順と家集『源順集』
http://www.geocities.jp/yasuko8787/z062.htm
◆順集(テキスト)
http://tois.nichibun.ac.jp/database/html2/waka/waka_i102.html
◆源順集(画像)
http://base1.nijl.ac.jp/iview/Frame.jsp?DB_ID=G0003917KTM&C_CODE=0020-00309

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