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日記一覧
- ルビコン・ビーチ／スティーヴ・エリクソン
- 2016年12月30日23:51
島田雅彦訳、ちくま文庫版。並行世界(？)の分断され、抑圧されたディストピア的アメリカを舞台に、幻の女を追う政治犯の男を起点として、さまざまなイメージが連なり、散乱していく。語り手も視点もくるくると入れ替わり、読んでいる方もくらくらと目くるめき
- 小松左京コレクション／大森望編
- 2016年12月29日23:48
角川E文庫版。昨日の『横浜駅SF』といい、『Visions』といい今年を振り返ると例年以上に大森望の引いたレールの上でSF読んできた気がする…。いやまったく不満はないし、本書も幅広い作品チョイスで小松左京の魅力と奥深さをたっぷり伝えてくれる良アンソロ
- 横浜駅SF／柞刈湯葉
- 2016年12月28日23:45
無限増殖した横浜駅が本州全土を覆いつくし、JR北海道とJR九州がそれに対抗して絶対防衛線を張る世界。駅の中でSuicaを体内に埋め込まれ、「自動改札」に管理されて生きる人々、駅の外で駅から生成される物資のおこぼれにあずかって生きる人々、どちらも酷
- 壁／安部公房
- 2016年12月27日23:26
ある日、目を覚ますと彼は名前を失っていた…という発端から、混迷の度合いは一切減ずることなく、奇想天外な彷徨が続いていく。胸の中の大砂漠に、動物園のラクダが彷徨い込み、その罪で裁判にかけられる―。自分の名前を奪った名刺を始め、ズボンが、メガ
- ずっとお城で暮らしてる／シャーリイ・ジャクスン
- 2016年12月20日22:58
６年前に起きた殺人事件の謎を秘めた屋敷、そこに閉じ込めらえるようにして暮らす姉妹…とくれば、最後は館が炎上し、謎は暴かれ…と成るのは定石であり、実際そのようになるのだが、その果てにさらに意外な方向へ突き進んでいくのが、本作のユニークであり
- 蜘蛛ですがなにか？／馬場翁
- 2016年12月19日23:59
女子高生が異世界転生、でも転生先は蜘蛛！という変わり種というかゲテモノというか。しかし、異世界はいたってゲーム的で行動によってガンガンスキル取得していく熟練度システム系。そりゃ糸とか毒とかステルスとかいろいろできる蜘蛛系は楽しいわー。別に
- 鳥の巣／シャーリイ・ジャクスン
- 2016年12月17日23:50
多重人格ものの古典的名作の一つ、といえるだろう。孤独な少女(…というには実年齢は少し取り過ぎているが)のうちに潜む別人格が互いに争いあい、主導権を奪いあうと同時に、彼女たちの核となるある真実を隠そうと、戦う。作中のほとんどが内的闘争に費やさ
- 天界の眼 切れ者キューゲルの冒険／ジャック・ヴァンス
- 2016年12月15日21:35
国書刊行会「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」シリーズ。１０年以上前に原書で読んでいるのだけれど、当時自分の英語力に深甚な疑いを抱いたことを憶えている。あまりにも突拍子もない事件ばかりが矢継ぎ早に起こるので、誤訳しているのではと不安になっ
- 爆発の三つの欠片／チャイナ・ミエヴィル
- 2016年12月11日23:45
二段組５００頁超に２８作収録という重量級の短編集。全体にSF、というよりはホラーの色彩が強い。こうしてみるとミエヴィルとヴァンダミアはハリスン直系の双子、ニュー・ウィアードの体現者である。まったく明確な説明を欠いたまま、不気味なものが現前して
- 自生の夢／飛浩隆
- 2016年12月09日23:57
飛浩隆短編集！同時購入の「Visions」と一篇被ったけど、間を置かず再読する価値十分の傑作なので気にしない。というか勢いあまって『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』まで再読してしまった。その「海の指」と表題作が双璧だとは思うが、その多く
- [観劇]天使も嘘をつく／燐光群
- 2016年12月08日23:38
作・演出坂手洋二。AIホールの舞台をいっぱいに使い、舞台後方に三本の赤い方柱、あとは黒一色のシンプルなステージに、常に１０人前後が入り乱れるパワフルなステージ。政治的で現在進行形な色んな意味で痛くて重い題材を、適度に笑いどころも交えて二時間
- Visions／大森望編
- 2016年12月07日23:04
「今読みたい日本のSF作家ランキング」の上から選んだそのまま、といった豪華執筆陣による短編集。こういうのは早川か創元か河出で出さないと面目丸つぶれじゃないですかというか、講談社から出るSFアンソロジー(非文庫)なんてアンテナ引っかからないよ！これ
- 世界でもっとも深い迷宮／円城塔
- 2016年12月03日23:17
ある年代の男子にはとてもキャッチ―な題名で、おまけに題材はゲームブック！…なんて疑似餌にまんまとかかって読み進めると、読まれている物語があらたな触覚・視覚を獲得してこちらの顔色伺ったりと、まことに油断のならぬ円城ワールド。いつのまにやら文
- ハリー・オーガスト、15回目の人生／クレア・ノース
- 2016年12月02日23:54
いわゆるループものだが、主人公を始め５０万人に１人、何度も人生をやり直す「ウロボロン」「カーラクリシュナ」が存在して、「クロノスクラブ」なる秘密結社というか時を越えた互助会を作っている、というのが実にユニークな発想。集団の性質上、歴史を好
- ヒュレーの海／黒石迩守
- 2016年11月30日23:52
第四回ハヤカワSFコンテスト優秀賞作品。冒頭からラストバトルにいたるまで怒涛の設定解説！解説！しかも解説されても８割理解不能なジャーゴンまみれ！…と小説技法としてはおよそ問題外なことをしている筈なのに、何故か惹き込まれるのものがあるのは、SFの
- エイルン・ラストコード４／東龍之助
- 2016年11月28日23:42
スパロボ系ライトノベル、第四巻にして失速の片鱗もなし！相変わらずギチギチに詰め込んだキャラ・メカ・展開に自分の内なる中学二年生が大はしゃぎしてしまう。普通のラノベの３巻分くらいの内容が詰まってるんじゃなかろうか。こんなロボバトルやりつつ学
- ゴッド・ガン／バリントン・J・ベイリー
- 2016年11月26日23:26
神殺しの光線銃！地中戦艦！流体宇宙論！火星蟹の青春！不死身エイリアンの秘密！ネタを羅列するだけで頭がクラクラしてくる短編集。どの短編も中核となるアイディアは一筋縄ではいかないユニークさなのだけれど、それを存分に展開できる長編の方がベイリー
- 日時計／シャーリィ・ジャクソン
- 2016年11月24日23:33
舞台は日時計、四阿、迷路、バラ園まで備えた立派なお屋敷。その跡取り息子が死に、その母にして今や家政の実権を一手に握ったハロラン夫人は、嫁や家庭教師、元愛人の図書係ら一堂に屋敷からの退去を宣告する―。作者についての予備知識なしに、この冒頭を
- さあ、気ちがいになりなさい／フレデリック・ブラウン
- 2016年11月22日23:50
だいたいは既読だが、星新一訳版を、こんなカッチョいい表紙で出されたら買わずにいられまい。そして何度読んでも、いくら時を経ても色褪せぬこの面白さ！短編の妙味がここには詰まっている。思いもよらぬ急展開、SF的な奇想、ときにはしみじみ、しんみりさ
- 偉業／ウラジーミル・ナボコフ
- 2016年11月21日23:37
光文社古典新訳文庫版。ナボコフ初期の自伝的青春小説、との触れ込みだが、ほとんど猥褻なまでになめらかに巧みな文章、若者の空回りする情熱への冷徹な眼差しは老練そのものに思える。現実と妄想、願望が混濁する作中世界は、しかし不思議と懐かしさと共感を
- AIとは人類は共存できるか？人工知能SFアンソロジー／人工知能学会編
- 2016年11月18日23:36
AIをテーマとした短編SFに、それぞれ専門家の解説が付く、という刺激的な構成のアンソロジー。収録作が年間ベスト級の力作揃いなうえ、解説も単なる総論、最新成果のまとめといった趣きではなく、ちゃんとそれぞれの短編に即して語ってくれていて、研究者の
- その可能性はすでに考えた／井上真偽
- 2016年11月17日23:01
まず一つの事件状況を提示しておいて、それを解説しうる推論をでっちあげ、それをさらに探偵が論破していく…というミステリのゲーム性が極まったような小説。各仮説ごとに違うキャラが登場して、違うステージで論戦を繰り広げるのもまたゲームっぽい。タイ
- ボロコーヴはミムジイ 伊藤典夫翻訳SF傑作選
- 2016年11月13日23:58
看板に恥じぬ名作揃いのうえ、短編集を編まれ難い作家たちの作品が読めるアンソロジーになっているのも有り難い。ブラナーとか翻訳で読んだのはどれだけ振りか。変名含め全体の１／３がカットナーになっているもご愛嬌。表題作のアイディア、「ハッピー・エ
- [観劇]くだんの件／KUDAN Project
- 2016年11月11日23:31
天野天街作・演出。完全な二人芝居で、コントだが大道芸だかわからない掛け合いを延々繰り返し、繰り返し…(十八番の台詞完全リピートも２パターンもある！)背景となる「夏」の風物にはそれもまた相応、と思いつつも正直ダレる部分もあったが、それがああいう
- 星群艦隊／アン・レッキー
- 2016年11月07日23:56
Ancillary三部作の完結編。皇帝アーナンダの暴政に立ち向かう主人公という構図は一貫していてで、物語内のタイムスパンや移動距離的にも１巻目よりはるかに小規模なのだけれど、その代わりに成長した主人公(とそれに感化された周囲の人々)の視点の広がりと
- 狂人日記 他二篇／ゴーゴリ
- 2016年11月02日23:10
岩波文庫版中・短編集。・ネフスキイ大通り賑々しいメインストリートの風景を活写した後段で、その虚飾をバッサリ切り捨てるやりくちは痛烈そのものだ。その落差に敗れて自死を選ぶ純心な画家と、適応して遊び続けるプレイボーイ将校の対比も鮮やかだ。二本
- ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン／ピーター・トライアス
- 2016年10月28日23:16
略してUSJ！第二次世界大戦で日本が勝利した、巨大ロボの闊歩する大日本帝国領アメリカ！こんなイカモノ丸出しな設定なのに、人間ドラマ自体はいたってシリアスによくできていて(極限下で垣間見える人間性、という点でル・カレのスパイ小説のそれに近い)戸
- 天冥の標�愁劵箸任△襯劵箸箸覆ぅ劵箸�Part2／小川一水
- 2016年10月25日23:29
こういうとんでもない巻数ナンバリングの付け方、どっかで見たぞ・・・って「境界線上のホライゾン」か！奇しくも同時期に完結しそうな両シリーズが、ラスト前にはとんでもないチャブ台返しをかましてくる川上稔に対し、こっちは着実に今までの風呂敷を畳ん
- 想像ラジオ／いとうせいこう
- 2016年10月24日23:42
東日本大震災を直接の契機としているが、広く死者を思うこと一般、あるいは和歌や能のなかに見て取れる文学の本義、といったところもまで到達しているかもしれない。死者を偲ぶこと、あるいは死者の方から(詩人や歌い手の口を借りて)呼びかけてくること…。
- 彼の歌の示すところ／アン・レッキー
- 2016年10月18日22:44
はるこん短編集。・へスぺリアに栄光あれ「追放された火星の王子」を名乗る奇妙な男は、存在しない筈の我が家の地下井戸から失踪した…。件の人物が語る火星幻想にはSF者なら誰しも心惹かれてしまうだろう。それだけに、彼と語り手との二つの幻想のせめぎ合
