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日記一覧

 もはやラノベというよりワイドスクリーン・バロックなSFサブタイトルだが、実際、今クライマックスを迎えている「天冥の標」全10部にも引けを取らぬスケール感である。怒涛のごとく明かされる真実!人類史の裏面、1万9683回ものループ、異性体の目的

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ずうのめ人形/澤村伊智
2019年01月29日23:26

 呪いの人形にまつわる都市伝説を軸にしたホラーだが、作りとしては叙述トリックや作中作を駆使したミステリに近い。『リング』その他の名作ホラーにふんだんに言及してオマージュを奉げつつ、しっかり怖い、というのはなかなかの離れ業であろう。語り手(二

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[観劇]少年王國記
2019年01月18日20:28

 メイシアタープロデュース公演SHOW劇場vol.12。無人島へ遭難する理由が世界大戦から原発事故に変更されているものの、基本的には原作『蠅の王』をなぞる。小さな舞台に10数人がひしめきあい、ときに角材を振り回して立ち回るのは、白塗り姿と卓抜な照明効

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 編訳者曰く「うっすらと不安になる小説」を集めたアンソロジー。レイ・ヴクサヴィッチ「ささやき」が、ストレートな恐怖譚として身震いするほど恐ろしい話だが、アンソロジー全体としては「奇妙な味」というべき味わいの短編が過半を占める。なかでもケン・

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 ダンジョンRPG風の世界で、ルームガーダーのミノタウロスがバグってワンダリングし始め、伝説級の英雄相手に大金星上げてレベル急成長、果ては迷宮の最下層ボスさえ打倒して新たな「迷宮の王」として君臨することに…。ほとんど事故か天災のように一直線に

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[観劇]盲年/幻灯劇場
2019年01月13日22:56

 @人間座スタジオ。能「弱法師」を下敷きに、僅か1時間の上演時間に幻灯、ダンス、アクロバットにブラックジョークとミステリを詰め込んだ、なかなかに欲張りで濃密な作品。四人の訳者が幻灯と入り混じり、せわしなく立場を入れ替えながら演ずる寸断された

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風牙/門田充宏
2019年01月12日23:48

 機械的に制御しなければ人格崩壊を起こすほどの共感能力を用いて、他者の記憶にアクセスする技術者を主人公とした、連作短編。四本の短編が、その異能力のために幼少期に記憶を無くした主人公の過去を、多角的に照らし出すような構成が面白いが、魅力的な設

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 コズミックホラー特集号…クトゥルー神話ものを敢えて排しているのはわからなくはないが、そもそもこのジャンルに組み入れるのに首を傾げるような作品が過半を占めるのは如何なものか。・沃沮の谷/荒山徹本書で唯一クトゥルー神話を直接用いた作だが、なに

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新潮社ナボコフコレクション。・ルージン・ディフェンス旧訳(若島正訳)からナボコフに入門したので、個人的にも思い入れ深い作品である。独自の世界観を持つゆえに孤独な男の、悲恋と失墜の物語。彼と、読者だけが感知しうる、ある冷厳なルールは、この世界

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