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日記一覧

島田雅彦訳、ちくま文庫版。並行世界(?)の分断され、抑圧されたディストピア的アメリカを舞台に、幻の女を追う政治犯の男を起点として、さまざまなイメージが連なり、散乱していく。語り手も視点もくるくると入れ替わり、読んでいる方もくらくらと目くるめき

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 角川E文庫版。昨日の『横浜駅SF』といい、『Visions』といい今年を振り返ると例年以上に大森望の引いたレールの上でSF読んできた気がする…。いやまったく不満はないし、本書も幅広い作品チョイスで小松左京の魅力と奥深さをたっぷり伝えてくれる良アンソロ

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横浜駅SF/柞刈湯葉
2016年12月28日23:45

 無限増殖した横浜駅が本州全土を覆いつくし、JR北海道とJR九州がそれに対抗して絶対防衛線を張る世界。駅の中でSuicaを体内に埋め込まれ、「自動改札」に管理されて生きる人々、駅の外で駅から生成される物資のおこぼれにあずかって生きる人々、どちらも酷

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壁/安部公房
2016年12月27日23:26

 ある日、目を覚ますと彼は名前を失っていた…という発端から、混迷の度合いは一切減ずることなく、奇想天外な彷徨が続いていく。胸の中の大砂漠に、動物園のラクダが彷徨い込み、その罪で裁判にかけられる―。自分の名前を奪った名刺を始め、ズボンが、メガ

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 6年前に起きた殺人事件の謎を秘めた屋敷、そこに閉じ込めらえるようにして暮らす姉妹…とくれば、最後は館が炎上し、謎は暴かれ…と成るのは定石であり、実際そのようになるのだが、その果てにさらに意外な方向へ突き進んでいくのが、本作のユニークであり

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 女子高生が異世界転生、でも転生先は蜘蛛!という変わり種というかゲテモノというか。しかし、異世界はいたってゲーム的で行動によってガンガンスキル取得していく熟練度システム系。そりゃ糸とか毒とかステルスとかいろいろできる蜘蛛系は楽しいわー。別に

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 多重人格ものの古典的名作の一つ、といえるだろう。孤独な少女(…というには実年齢は少し取り過ぎているが)のうちに潜む別人格が互いに争いあい、主導権を奪いあうと同時に、彼女たちの核となるある真実を隠そうと、戦う。作中のほとんどが内的闘争に費やさ

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 国書刊行会「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」シリーズ。10年以上前に原書で読んでいるのだけれど、当時自分の英語力に深甚な疑いを抱いたことを憶えている。あまりにも突拍子もない事件ばかりが矢継ぎ早に起こるので、誤訳しているのではと不安になっ

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二段組500頁超に28作収録という重量級の短編集。全体にSF、というよりはホラーの色彩が強い。こうしてみるとミエヴィルとヴァンダミアはハリスン直系の双子、ニュー・ウィアードの体現者である。まったく明確な説明を欠いたまま、不気味なものが現前して

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自生の夢/飛浩隆
2016年12月09日23:57

 飛浩隆短編集!同時購入の「Visions」と一篇被ったけど、間を置かず再読する価値十分の傑作なので気にしない。というか勢いあまって『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』まで再読してしまった。その「海の指」と表題作が双璧だとは思うが、その多く

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 作・演出坂手洋二。AIホールの舞台をいっぱいに使い、舞台後方に三本の赤い方柱、あとは黒一色のシンプルなステージに、常に10人前後が入り乱れるパワフルなステージ。政治的で現在進行形な色んな意味で痛くて重い題材を、適度に笑いどころも交えて二時間

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Visions/大森望編
2016年12月07日23:04

「今読みたい日本のSF作家ランキング」の上から選んだそのまま、といった豪華執筆陣による短編集。こういうのは早川か創元か河出で出さないと面目丸つぶれじゃないですかというか、講談社から出るSFアンソロジー(非文庫)なんてアンテナ引っかからないよ!これ

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 ある年代の男子にはとてもキャッチ―な題名で、おまけに題材はゲームブック!…なんて疑似餌にまんまとかかって読み進めると、読まれている物語があらたな触覚・視覚を獲得してこちらの顔色伺ったりと、まことに油断のならぬ円城ワールド。いつのまにやら文

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 いわゆるループものだが、主人公を始め50万人に1人、何度も人生をやり直す「ウロボロン」「カーラクリシュナ」が存在して、「クロノスクラブ」なる秘密結社というか時を越えた互助会を作っている、というのが実にユニークな発想。集団の性質上、歴史を好

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