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日記一覧
- 泰平ヨンの未来会議／スタニスワフ・レム
- 2017年12月29日23:36
改訳版。幻覚の中で更に幻覚剤に支配された未来を夢見る、恐ろしくサイケデリックなディストピア譚。夢オチなのに、むしろそれが救いに感じられるような悪夢の連鎖は笑い半分、怖さ半分で、容赦ない自己変容の連続もあって、酩酊感が半端ではない。
- シルトの梯子／グレッグ・イーガン
- 2017年12月27日23:10
イーガン新作、とはいうものの原本自体は『白熱光』や『直交』三部作より以前の出版で、これらよりは幾分読みやすい…比較的に。すいません、あまり付いて行けていません。古典力学と量子力学との関係に対応する、量子力学を包摂する未知の物理法則の存在と
- [観劇]管理人
- 2017年12月26日23:43
ハロルド・ピンター作、森新太郎演出。舞台となるのは壁紙の剥がれ落ち、天井には雨漏り対策のバケツが吊り下げられ、という有様のガラクタまみれのアパートの一室、ここで３人の男たちが繰り広げるのは、絶えずすれ違い続け、決して重なりあうことなき非＝会
- アンナ・カレーニナ／トルストイ
- 2017年12月24日23:57
光文社古典新訳文庫。何せヒロインが登場するまで１５０頁１７章もかかる、という悠長な小説なもので、１巻終わり(第２部)あたりから等比数列的に面白くなってきて３・４巻はほぼ１日で読み切ってしまった。言ってしまえば人妻が不倫をして破滅するだけの、
- ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所／D.アダムス
- 2017年12月18日22:09
かの「銀河ヒッチハイク・ガイド」の著者によるSFミステリ…と一言で片づけられるはずもない、シッチャカメッチャカとは本作のために生み出された言葉、と断言できる怪作。ミステリとしては『ドグラ・マグラ』級、SFの側からはベイリーやベスタ―のもっとも
- [観劇]くじらと見た夢／燐光群
- 2017年12月16日01:14
「お召し列車」「天使も嘘をつく」と社会派ドキュメンタリー色の強い作品を上演してきた燐光群だが、やや啓蒙的でありすぎて演劇作品としての興趣を欠く向きがあった。「ためにはなるが面白いかというと首を傾げる」というのが正直なところ。しかし今作は、去
- フライ・バイ・ワイヤ／石持浅海
- 2017年12月15日16:09
近未来、ロボット(を遠隔操縦して)の転校生を巡る青春SFミステリ。実験の機密保持を盾に自分のことを明かさない「転校生」に対し、読者が当然に想起する疑問「実は遠隔操作ではなく自立制御のロボットなのでは？」そのものを組み込んだ事件の構図が上手い。
- 境界線上のホライゾン�勝γ罅神郛緻�
- 2017年12月09日23:05
ここのところ、ずっと「怒涛の展開」続きで読んでて大変体力を使うシリーズだったのだけど、今回はその極めつけ。数年間引っ張りに引っ張ったネタや数々の伏線が回収されて謎が解き明かされる、この超ド級サイズのシリーズをずっと追ってきた読者だけの特権
- 誰がスティーヴィ・クライを造ったのか？／マイクル・ビショップ
- 2017年12月06日22:44
国書刊行会「ドーキー・アーカイヴ」、文化人類学SFの名手マイクル・ビショップによる異色ホラー。スティーヴン・キングとシャーリィ・ジャクスンの悪夢的結婚というか、メタフィクション的手法を導入した複雑な構成ながらも、虚実が入り混じっていく恐怖感
- エヴァンゲリオンANIMA１・２／山下いくと
- 2017年12月04日23:38
ようやく単行本化されたEVA外伝。新劇場版が「Q」であんなことになってしまった現在、ちゃんと１７歳に成長したシンジ、アスカ、レイたちを見るともぉそれだけで感無量です。こっちはこっちで結局３人とも物凄いことに成っちゃうんだけどね！模型誌連載の企
- H.P.ラヴクラフト 世界と人生に抗って／ミシェル・ウェルベック
- 2017年11月30日23:47
意外な取り合わせに思わず手を取ってしまった、かの文名華やかなフランス作家ウェルベックが、なんとあのラヴクラフトの評伝を書いていたなんて…。しかも手放しの絶賛である。世界を人生を、金銭をエロスを峻拒して初めて成り立つ、暗黒詩の大伽藍！実人生
- [観劇]プライムたちの夜
- 2017年11月29日18:59
舞台上でまず目に入るのは下手側に立つ柱。斜めになった梁が、まるで十字の墓標のようでもあり、舞台中央に設えられた居間のセットを見下ろしている。舞台上手には、居間の家具とは異質な印象を受けるコクピットにあるような椅子が一つ配されている。題名の「
- コルヌトピア／津久井五月
- 2017年11月27日23:06
緑のサイバーパンク、とでも言おうか、植物を、あるいはそれらの織りなす環境そのものを計算に用いる近未来を描く、第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。昨今流行の暗澹たるディストピアではなく、さりとて技術信仰が過ぎるユートピアにも偏らず、あらま
- 南方熊楠近代神仙譚／佐藤春夫
- 2017年11月23日23:54
同郷の文豪による、熊楠伝。中編相当のボリュームであるから、熊楠の生涯については点描に限られ、その思想・業績も僅かに掠める程度の紙幅を割くのみだが、それでいながら彼の学哲の人となりがありありと紙面に浮かんでくる。没後十年にして既に伝説中の人
- ストライクフォール３／長谷敏司
- 2017年11月21日23:39
科学も異能も変態(！？)も、冷厳なロジックで組み上げてお話を作る長谷敏司の作風が、スポーツものとこんなに相性いいとは！根性論の入る余地なき、一流アスリートたちが鎬を削る、模擬戦争一歩手前のロボット競技「ストライクフォール」、そののヒリつくよ
- [観劇]どん底／劇団地点
- 2017年11月15日23:38
天井から吊り下げられた蜘蛛の巣のような電飾、流れ続ける小奇麗なジャズバーにでも相応しいようなBGM、奥のベンチに１人毛布を被って眠り続ける男、というのが開場前の舞台である。ここで既に地下室のようなボロ宿で繰り広げられる底辺の人間たちのドラマ
- ロレンザッチョ／ミュッセ
- 2017年11月13日22:09
光文社古典新訳文庫。『ハムレット』の末裔か、はたまた『罪と罰』の先触れか。狂人、臆病者、裏切り者、男色者の仮面の下、従兄弟たる暴君アレクサンドル・メディチの命を狙うロレンゾ・デ・メディチことロレンザッチョ。だがその動機は侮辱され続けた恨み
- 隣接界／クリストファー・プリースト
- 2017年11月10日22:21
なんとプリースト版「君の名は。」、なのである。謎の爆破テロで喪われた妻を求め、記憶も自己同一性も移ろうままに、時空を、並行世界を彷徨う男の物語であり、その逆のパートナーたる女性の探索行でもある。幾重にも重層した物語は前半こそ地味で一見つな
- 非常 寒風 雪国抄/川端康成
- 2017年11月09日12:04
講談社学芸文庫、「川端康成傑作短編再発見」と銘打たれた１２編。「針と硝子と霧」心を病みゆく女を、表題の３つのシンボルを用いて描き切る、鬼気迫る短編。散乱するイメージの果てに、放り捨てるような冴え冴えと乾いた結末が凄まじい。「イタリアの歌」
- GODZILLA怪獣黙示録／大樹連司
- 2017年10月31日23:22
今月公開のアニメ映画版「ゴジラ」の前日譚。怪獣版「ワールドウォーZ」といった趣きで、インタビュー形式で語られる「怪獣」による人類滅亡史が、淡々としたドキュメンタリー調であるだけに、余計に凄まじい。ひとたび現れれば百万単位で人間を殺傷し、大
- J.G.バラード短編全集４ 下り坂カーレースに見立てたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件
- 2017年10月30日21:09
表題作含め、かなり前衛的なコンデンス・ノベルが含まれ、前の３巻にもまして手ごわい短編集第４巻。個人的ベストには本書中最大の頁数である「最終都市」を挙げたい。脱工業化を成し遂げたエコで理性的なアルカディアをグライダーで脱走し、廃棄されたメガ
- ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ/トム・ストッパード
- 2017年10月28日22:48
「ハムレット」を下敷きにした不条理劇。粛々と「ハムレット」のメインプロットが進行していくその周辺をよたよたと彷徨い歩く二人の脇役、ローゼンクランツとギルデンスターン。その道行は滑稽かつ底冷えのする恐ろしさに満ちてもいて。なにも分からぬまま
- 図書迷宮／十字静
- 2017年10月26日23:42
魔法学園に迷宮図書館、吸血鬼のヒロインと記憶喪失の主人公！とラノベ王道まっしぐらな素材を、複雑怪奇なメタフィクション様式に盛りつける、という無茶なことを、ＭＦ文庫最長の５００頁の渡ってやってのける怪作。おまけに人称はゲームブックを思わせる
- 大東亜忍法帖／荒山徹
- 2017年10月25日18:42
幕末キャラで魔界転生をやる！という山風愛溢れるコンセプトは良し。ただ…やぱり剣客勝負させるには幕末にいかに新撰組や人斬り以蔵があろうとも、戦国の柳生や武蔵に比べてば１枚落ちる感が否めない、というのと転生者(まがいてんそう！)の人数が１２人と
- [観劇]メアリー・ステュアート／清流劇場
- 2017年10月20日23:27
原作：フリードリヒ・シラー。舞台両脇に置かれた花菱模様の四角柱は、回転することで舞台進行を示すが、壇上に置かれた二つの椅子(玉座)という舞台配置は不動のまま。囚われの女王、メアリーは能「安達原」で使われるのに似た竹製の可動式「檻」に入れられ、
- イザベルに ある曼荼羅／アントニオ・タブツキ
- 2017年10月19日23:05
サラザール独裁政権下で姿を消した一人の女性を探し求め、「私」は彷徨う…。やがて「私」自身も幽霊のような存在であることが明かされ、最後は白昼夢のような刹那の邂逅が閃き消えゆく。９つの円環と対話、その記憶だけが確かなものとして残る。どこか本朝
- 短歌殺人事件／齊藤愼爾編
- 2017年10月18日23:37
短歌×ミステリアンソロジー。松本清張「たづたづし」のようなクライム・ミステリから、寺山修司の掌編戯曲「復讐の美学」まで、短歌に題を採りながらも収録作は幅広い。獄中の吉田松陰を描く古川薫「野山獄相聞抄」、石川啄木に金田一京助、そして江戸川乱歩
- 徘句殺人事件／齊藤愼爾編
- 2017年10月12日23:47
「俳句」とミステリは相性がいいのかもしれない。具象的な現実を切り取る俳句の性質が、謎を解き明かす探偵の手つきに似るのかもしれない。実際、芭蕉や一茶を主人公に据えた新宮正春「旅の笈」、笹沢左保「虻は一匹なり」を始め俳人を探偵役に据えた作品が
- テルリア／ウラジーミル・ソローキン
- 2017年10月10日23:37
中世的領邦国家群と化した未来のロシア、闊歩する小人に巨人、獣人…人々は望むままの世界を体験させてくれるという究極の麻薬＝脳天に打ち込む魔法めいた釘「テルル」を求めて彷徨い歩く。テンプル騎士団の操る巨大ロボット兵団による新・十字軍や遺伝子操
- [観劇]出てこようとしているトロンプルイユ／ヨーロッパ企画
- 2017年10月09日22:50
舞台は亡くなった画家のアトリエでもあるアパートの一室、同宿の３人の(自称)画家が大家に部屋の片づけに借り出されて、いやいや残された絵を捨て始める…のだが、売れないクセに口ばっかり達者なこのトリオ、なにかというと絵画論で喧々諤々、掃除はちっと
