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日記一覧

 タイトルはマタイ伝に由来する。狂信的な老人に育てられた少年が、老人の死後に辿る魂の遍歴を描く。20世紀中ごろのアメリカ南部を舞台に、ひりつく様な緊迫感に満ちた文体で記されるのは、信仰というよりは呪縛。死んだ祖父の狂信を嘲笑し、反発しながらも

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 創元社書下ろしSFアンソロジー。・一万年の午後/久永実木彦 本書の中ではもっともSFらしい道具立ての一本。滅亡した人類の遺志を継いで、とある惑星の生態を観察し続けるロボットたち…同一存在であるはずの彼らに、死と暴力が差異をもたらす。ギムナジウ

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[観劇]スカイライト 
2018年12月27日22:43

@兵庫芸文。演出:小川絵梨子。かつて不倫関係にあった男女が再会して一夜を過ごし、過去と現在の自分たちを見つめなおして…というほぼ二人芝居。妻と和解できないまま死別してしまったことを悔やむ実業家の男、今は貧窮に耐えながら教師生活に献身する女、

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 ホームタウンを襲うゴブリンを主人公パーティーが撃退!…というのはほぼオマケで、メインはお祭り、デート×2!いや、結局血みどろのゴブリン掃討に雪崩れ込むんだから、息抜きもなにもあったもんじゃないなぁ、この世界。なのでヒロインsはもっと危機感

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 BDBOX特典小説…に、こんな必読副読本をつけるのは止めてくださいよー!3〜10巻まで各巻のあらすじに加え、キャラ相関図にハンドルネーム付きキャラ一覧表とか、これがあるとないとでは本編完読する難易度がダンチなんですけど!まぁ、川上稔読者はよく

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 上下2段700頁を一日で読み切らせてしまう、凄まじいリーダビリティ。婚約者との感情交感手術を受けたはずが、何故かイモくてギークな同僚男性との間にテレパシーが発生してしまったOLのドタバタラブコメ…という女子力(ちから)がハイパー化寸前のバカ

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 本編最終話のちょっとした会話を元に、作品世界の根本にまつわる設定を掘り起こし、数十人にも及ぶクセの強いキャラクターたちを誰一人格落ちさせずに(人によっては本編以上に)活躍させ、しかも面白い!!という漫画のノベライズとか外伝小説とかの域を遥

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@京都芸術センター。バーのカウンターを模した舞台で、高さ2M程の石壁に面して横に伸びた卓上に、無数の酒瓶が並んでいる。ユニークなのは、生演奏である意味俳優たち以上にこの演劇の主役でもある「空間現代」が、この石壁の上にセッティングされているこ

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NOVA2019春号/大森望編
2018年12月14日11:34

 書き下ろしSFアンソロジー。・お前のこったからどうせそんなこったろうと思ったよ/赤野工作積年の因縁ある老人ゲーマー同士が、月と地球に分かれて対戦ゲームをプレイすると…煮詰まった対人メタと通信遅延が相まってヒドいことになる、というゲーマーある

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 完・結!計算すると、だいたいグインサーガが当初の100巻構想で完結していたくらいのページ数、小説史上の偉業としてもそれに比肩する、と言いたい。一個人の手による(ラノベの場合、特に本作はイラストの貢献度も大きいが)、完結した創作としては空前

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 原作は一度読んだ程度だが、雨・セミの声・ループとほぼいつもの少年王者舘なので問題ない。もっとも、こちらもそれが目当てで観に来ているのでマンネリというにはあたらず、この中毒性を楽しむべし。たった二人の登場人物が、出たり入ったり、消えたりまた

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 バイオテロで崩壊した東京で、いま反乱の烽火があがる…遺伝子変異した奇怪な生物の這い回る不潔で毒々しい、99%住みたくない未来像だが、どこか祝祭めいた猥雑な明るさもあり、奇妙な憧れも覚える。人間の精神が玩具のごとく、犬だのもっと訳の分からぬ

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邪神決闘伝/菊地秀行
2018年12月02日23:33

 クトゥルー×ウェスタン×忍者という冒涜的マリアージュ。邪神の力を借りて邪神の夢を狩る、という主人公の立ち位置も美味しいが、やや雑に書き流した感は拭えないのと、どうしても白昼の決闘になりがちで素材の食い合わせは、やはり悪い。

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逆数宇宙/麦原遼
2018年11月30日23:03

 収縮を続ける宇宙の謎を解くため、自らを光=情報体の〈方舟〉に搭載して宇宙の果てを目指す人類の物語。イーガン直系!という趣の数理と宇宙論の合わせ技は、自分には歯ごたえがありすぎた。未開の惑星に不時着してしまい、自分たちを再発射させ得る文明の

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羊と鋼の森/宮下奈都
2018年11月26日23:57

 ピアノ調律師を主人公とした中編小説。華やかな舞台を支える裏方であり、決して脚光を浴びることはないが不可欠、という職業の在り方を、それに相応しく静かで真摯な文体で描いている。非才の身を自覚しながらも、ひたむきに仕事に向き合う青年、やがて才能

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 講談社学術文庫。金羊毛の皮を求め、イアソンはヘラクレス、オルペウスを筆頭に数多の英雄を率いて航海に出る―。複雑怪奇な英雄たちの血縁関係(だいたいはいずれかの神の子孫なのだが)、彼らが過ぎゆくそれぞれにゆかりある地名の数々、また文字通り神出

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 盤面解説および前哨戦、といった趣だった前巻を経て、怒涛の決戦篇、強敵難敵凶敵との激闘連戦に読む方も血が熱くなる。汎用的な基本技にもそれぞれ名前がついてる一方、伝説級の魔剣聖剣には固有必殺技有り、という某ロマサガ的システムも巻数を重ね、世界

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 @京都府立文化芸術会館。AI(本作では大づかみに「ロボット」と同一視されている…が歌って踊ってナンボのミュージカルなので野暮なツッコミだろう)研究者の男女が、研究費の獲得に悩むうちに出くわしたダンサーを、カリスマ精神科医と祭り上げて…という

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 2巻目が都市の地下下水道に潜むゴブリン退治!どこまでいってもゴブリン退治なのは初志貫徹というか、流石なのである。指輪物語を始め古典ファンタジーからTRPGネタ山盛りにしながら、一歩間違えれば全滅のシビアなハック&スラッシュを体感させてくれる、

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 村上春樹訳。掌編だが日常に潜む悪や絶望を描いて、切れ味の鋭い秀作が多い。全体に読者を突き放したような作風だが、巻末の訳者解題がほどよく解きほぐしてもくれる。個人的ベストは「出かけるって女たちに言ってくるよ」と「足もとに流れる深い川」。どち

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 ケン・セント・アンドレ、リズ・ダンフォース、そして「熊の」ピーターズ…自分にとっては思い入れ深い、輝かしき名前の数が並ぶ、トンネルズ&トロールズアンソロジー。「モンスター!モンスター!」でお馴染みのT&Tワールドだけあって、半オークやオーガ

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 @ピッコロシアター。足の不自由な子供の死をきっかけに、夫婦の間の不和が表面化し…イプセン原作の家庭劇。舞台は二段構造になっていて、中央にひょうたん型に突き出した部分が、第一場ではアルメルス家の家屋として使用される。どこか不安定なその形状は

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[観劇]直観と情熱/VOGA
2018年11月05日21:56

 @大阪市立芸術創造館。演出:近藤和見。ニーチェやダンテの引用、元素記号表数え歌(+群舞)に鏡像のパラドクス談義、イエス・キリストの死への道行き、そして交錯するネット上のアバターと実体(それぞれ別の役者によって演じられる)、と盛沢山の内容だ

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 「高槻de演劇 秋のプログラム2018」。脚本・演出は筒井潤(dracom)。「緊急会議」に召集されてきたらしき4人だが、いつまで待っても会議は始まらず、それどころかその議題さえも分からないままにあわあわと話は進み/また戻り…。途中、4人の役者は総入

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 電撃大賞金賞作。天空都市から地上に派遣された調査官の二人組による探索行、という枠組での連作短編。公務員といいつつ勤務実態はいたってユルく、地表への鑑賞も情実優先で、あまり「お仕事もの」という感じではない。ただその分、題名のとおりな軽やかな

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零号琴/飛浩隆
2018年10月29日23:19

 SFマガジン連載終了から7年を経ての、待望の刊行である。いつもの飛浩隆(…と一般化するにはあまりに寡作な作者だが)からするとややポップでキッチュな作風、酉島伝法と円城塔の作風を取り込んだような感もある。なにせ能楽にプリキュア(「仙女戦隊 あ

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 SFというジャンルの通弊ではあるが、チェコSFとしての珍しさより、ともすれば古さを感じてしまうアンソロジーだった。ベストは「ブラッドベリの影」だが、これとてブラッドベリならぬレムの巨大な影から踏み出せてはいないようにも思える。チャペックの作は

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 まさかのナンバリング新刊である。自分にとってのラノベ・THE・オリジンであるこのシリーズ、いろいろ感慨深い…。内容自体はすごく無難にまとめたボーナストラック、主要キャラ全員再集合でにぎにぎしい1冊だったが、この機に改めてバトルものとしての「

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演出家によるビフォアトークあり。ギリシアの地図を提示し、メデイアの出身地コルキスがギリシア本土から見ると黒海の果て、辺境の蛮地であることなど背景を解説する。舞台の上は現代風の調度(TV、ベッド、冷蔵庫にキッチンまで)が並ぶ。メデイア含め主要キ

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 原題"Six Wakes"。宇宙船の中で目覚めた6人、目の前には自分たちの惨殺死体が転がり、クローンとして再生したことに気づく…SF×ミステリの趣向も、6人のキャラクターそれぞれの秘められた過去が結びついて、真相を明らかにしていくというプロットも大変好

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