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日記一覧

ローマを見た/山崎正和
2017年06月28日00:32

 天正少年使節に題を採ったミュージカル風の戯曲。コロンブスやローリー、モンテーニュといった当代の立役者たちも登場し、宗教改革期のヨーロッパを少年使節たちの目から―そして現代の我々の視点から、捉え直すスケールの大きなページェント。同時収録はシ

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 原題"A Borrowed Man"も邦題もともに字義通りの意味で内容を表しており、主人公であり語り手にして探偵役を務めるのは、図書館の「書架」に住まう過去の作家の複生体(リクローン)なのである。しかも基本的に人間とはみなされず、奴隷同然の扱いをされ、著述

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蜜蜂と遠雷/恩田陸
2017年06月20日23:03

 才能溢れる若きピアニストたちが鎬を削るコンクールを題材とした音楽小説。天才、素晴らしい演奏、とこう記すだけならタダだがそれを文章で表現するのは至難のワザ、それをこのページ数まったくダレず、恋愛沙汰だの殺人事件だのの不純物を一切交えず書き切

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 36歳で爆死したパレスチナ人作家による短編集。「太陽の男たち」土の湿り気を全身で感じる男を描写して始まる、この短編はギラギラと照りつける太陽のもとでの砂漠行(クウェートへの密入国)をうんざりするほど克明に描いた末に、熱と渇きの果ての残酷な結末

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 実質上下巻なので一気読み。あわせて1200頁近くのボリュームだが、亡国のお姫様を護衛しながら目的地へ届けるだけ、というこのシリーズにしてはシンプルな内容(それでも一行の中に内通者が複数いたり、敵勢力も三つ巴四つ巴上等だけど)で、一息に読み通

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 短編集、兼第二部始動編?基本的に後味の悪〜いガユス&ギギナのお仕事ものの短編をいくつも読んだ後だと、超インフレバトルの復活の凶戦士ユラヴィカ主人公の「迷い蝶」の小気味いいことったら。これといいこの後に配されたクエロ主役の「世の果ての宴」と

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 沖田総司、アルセーヌ・ルパン、ダ・ヴィンチ…架空の、あるいは伝説上のキャラクターの力と人格をまとって学園異能バトル!って書きだすと物凄くありがちなのだけど、それを好きが昂じて、演技が極まった結果の二重人格的コスプレ、「新型中二病(ダブルロ

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 代表作「Stand on Zanzibar」と同じく人口過密で荒廃した未来が舞台であり、またドラッグ問題も絡んでくるのだが、その二つのプロブレムが両者一挙に、しかも恐ろしくユニークなSF的方法で解決される。その結末まではひたすら停滞しきった未来社会と、主人

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 サンリオSF文庫版を300円で入手できたので読んでみたけど、あまりに訳が酷すぎて結局Kindleで英語版購入して対照しないと読めたものではなかったという本末転倒ぶり。歴史上のあらゆる時代から歴史改変戦争に集められた兵士たち、という設定上、ドイツ語

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 魔法使いの人狼、という怪体なキャラメイクの主人公で魔王軍率いて人類軍と戦う戦記もの。攻城戦あり、内政ありで多用なモンスター兵種を駆使していく、ウォーシミュレーションをモンスター側から描いた楽しさがある。もっと血腥い内容を予想していたのだが

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斜陽/太宰治
2017年06月02日22:23

 先日観劇した「非常の階段(アマヤドリ)」の元ネタということで手を出してみた。共通すると見て取れるのは己の弱さに食い尽くされるように死んでいく弟と、その弟の兄貴分である無頼の男に危うげな恋をする姉、という3人の主人公、という骨子のみ。しかし、

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 表題作や「スクリーン・ゲーム」「溺れた巨人」他、傑作揃いで1・2巻以上の円熟感溢れる短編全集。こうして通して読んでみると、自分がバラードに惹かれるのはSF方面の文明論的洞察よりも、廃墟、結晶、夢と現実の反転といったイメージの美しさの側なのか

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