ジャック・ヴァンス、ロジャー・ゼラズニイ、シャーリー・ジャクスン(ちなみにこの順番は自分の好きな順)他、錚々たる面々から成る「奇妙な味」アンソロジー。 ・赤い心臓と青い薔薇/ミルドレット・クリンガーマン 平和な家庭に我が物顔で居座る闖入者・
廃都と化した東京で異星生物をハンティング!というロマン溢れるシチュエーションで魅せる青春劇。異星生物といってもふつうに捌いて食えるし、習性もあんまり地球のものと変わらず、理解不能なものを相手にしている、というSF感覚は薄い。むしろ、古来のマ
早川SF文庫新版。前の訳もこの訳の単行本版も既読…だがそれでもなお、冒頭から惹き込まれ、恐怖と緊張と戦慄のうちに読み通せてしまった。宇宙基地にヒタヒタと響く素足の足音、ひきこもった科学者の部屋から聞こえる子どもの声、といったホラー的な描写で
魔法と科学がともに発展した20世紀を舞台にした、改変歴史ものの傑作冒険譚。「箒」を動力にした飛行機だとか、人狼を殺すための10発に1発込められた銀の弾丸だとか、ロバチェフスキーを交霊して地獄の座標を割り出すだとか、ガジェットが一々秀逸。説
バレンタイン・デーやハロウィーン、クリスマスなど各記念日にちなんで作品を配した、趣向の凝った短編集。もちろん、凝っているのは構成だけではなく、それぞれ短編ながらも一癖も二癖もあるものばかり。一読しただけではなにやら正体のつかめず、解説を読
歌人・藤原定家の後半生を、後鳥羽院との確執を軸に描く。戦乱の世を余所に「紅旗征戎吾が事に非ず」と嘯いて、徹底的に人工的な美を詩文のうちに追求した定家。その鬼気迫る姿を、ときに凡庸な息子為家の視点から眺めて評し、ときに政治や金策に奔走する醜
まさかのカズオ・イシグロによるファンタジー、それも遍歴の騎士によるドラゴン退治!もっとも、メインは主人公の老夫婦の心の絆、ブリトン人とサクソン人の民族対立を背景として、ノンジャンルな多層的な読みを誘う作り。記憶を失わせる霧に包まれた世界、
表題作のほか、「ひばり」「唖のユリュミュス」を収録。「アンチゴーヌ」も「ひばり」も、ともになにか空恐ろしい「真実」、いやそんな大仰なものではないが、確実に神や愛よりも大きなものと直結してしまった少女たちの、殉教あるいは輝かしき自殺行為を描
いやぁ、凄い。なにがスゴイって、前の巻の時点で「こんなん畳み切れるきれるわけないじゃんっ!」という感じだった大風呂敷を、今回さらにさらに広げきってみせてるところ。あれで「役者が揃った」訳じゃなかった・・・どころかまだまだこれから、「真の英
新人の作品としてはほとんど破綻もなく、高水準でまとまったファンタジーだが、逆にいうとデビュー作ならではの荒削りな魅力、「俺はコレが書いたいんだ!」的主張が見られないのはちょっと食い足りなくもある。釘宮理恵ボイスの似合いそうな鉄巨人「スチー
映画「神々のたそがれ」経由で、普段読みつけないソ連SFに手を出してみたのだが、ストルガツキー兄弟以外の2編も劣らぬ良作だったのは思わぬ収穫であった。・ゲンナージー・ゴール「クムビ」 エイリアンとのファーストコンタクト、人工知能、記憶転写、完
中国系アメリカ人作家によるSF短編集。作者自身公言しているとおり、テッド・チャンの影響が色濃いが、どちらかというとテッド・チャン直系の作品よりも中国・日本ネタを絡めた作品の方が、リーダビリティも高くおもしろい。表題作は特に、だが個人的な好み