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2016年11月24日23:33

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日時計/シャーリィ・ジャクソン

 舞台は日時計、四阿、迷路、バラ園まで備えた立派なお屋敷。その跡取り息子が死に、その母にして今や家政の実権を一手に握ったハロラン夫人は、嫁や家庭教師、元愛人の図書係ら一堂に屋敷からの退去を宣告する―。作者についての予備知識なしに、この冒頭を読めば、当然、お次はいわくつきの日時計の元で夫人が奇抜な方法で殺され、屋敷もののミステリが始まるものと思うだろう。しかし、さにあらず(もっとも、最終的には結局そのような場面が現出するのがまたおかしいところなのだが)、ハロラン夫人の義姉のオールドミス、ファニーおばさまが奇妙な―世界週末の予言を聞いたことで、そして何故か一同がそれを信じこんだことで、物語は明後日の方向へカッ飛んでいく。屋敷に次々闖入する奇妙な人物たち、彼らの多くもまた、屋敷内の妄想(?)に囚われて、この一風変わった方舟の乗組員となってしまう。交霊術のような真似までして破滅の日取りを探り、いがみあいながらも粛々と「その日」の準備をする人々、というのがこの物語のメインプロットなのである。権力欲の塊のようなハロラン夫人に、毒舌にして聡明なる孫娘ファンシー、登場人物の強烈なキャラクターも相まって、あまりにユニークな傑作。
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