原題「Jack Glass」から些か盛りすぎな邦題ではあるけれど、なにしろこの作者、他の作品も直訳すると「塩」だの「石」だので売り出す羽目になるので、少々のデコレーションは許容範囲であろう。「宇宙的殺人者」はダサいが決して誇張ではないのであるからし
アイホールでの千秋楽。天井の木目や穴に異国の風景を幻視する3人家族(?)、引きこもってガラクタでロボットを作る男とその友人、誰にも読めない文字で日記を書く少女とその姉、次々場面は変わっても、ボロアパートの一室、中央にちゃぶ台という舞台は不動
あまりにも過酷に過ぎた前巻から、再起を目指す若者たちの物語として「正しく」ライトノベル方面に舵を切っている第5巻。内容的にはまだまだライトとは言い難いが、戦闘シーンもほぼ排除してこの緊張感、一歩一歩希望へとにじり寄っていく真摯な歩みが胸を
アラフォー男子5人が、大学時代以来の劇団を再結成、「オセロ」に挑む…不倫とかEDとか年相応にドロドロしたものの含みつつ、しかし男って奴ははいつまでたっても…という呆れ気味の優しい視線が基調になっていて、漫画的に各人のキャラが経っていることも
「人類補完機構全短編3」。前の2巻がほぼ再録だったのに対し、こちらは文庫初収、初訳作が多くてお得感あり。というか、こんな未知の傑作がまだ埋もれていたとは!と絶句したのが、表題となっている「キャッシャー・オニール三部作」こと「宝石の惑星」「嵐
当時16歳の平田オリザの世界一周自転車旅行記。これを早熟とは言うまい。この旅行は彼の人生の一過程でしかないのは、後の劇作家としての活躍を見ればこそ言えることだが、恐ろしいのは本文中で当人がそう断言していることだ。「この歳でこんなスゴイことし
初ウイングフィールド。40人キャパほどのビル6階ワンフロアぶち抜きの小劇場で、座席はベンチに座布団、という長時間の観劇は辛そうな空間。舞台はなんと本物の草花が植え込んであり、ベンチやロッキングチェア、リヤカーが備わった、ヒマワリやコスモス
イェリネク原作。鏡面のような舞台のうえに、舞台装置は古びた蓄音機が一台のみ。舞台の手間は芝生が張られた2段の階段になっており、白い花が植えられている。手に手をとって入場してきた役者たちは皆白ずくめ、フードを被った姿はオバQめいてキュートでも
『羅生門』『人形の家』『アンネの日記』『少女革命ウテナ』をアメリカという器に注いで、ゴリゴリゴリゴリ器も割れよと混ぜ立てて、出来たドロリと真っ黒な液体、というが読了後の率直なイメージ。このタイトル(なんて素晴らしくも禍々しい、鉄棘がびっし
山奥の謎の屋敷で、座敷牢に囚われた白ずくめの少女の元に通い、「僕」はせがまれるまま「怖い話」を10年間語り続けた…伝奇物あるいはボーイミーツガール、といった開幕から一転、都市伝説を科学的に解体・解明するミステリに…と思ったら「情報生命体」
2115年からお送りするレトロゲームレビュー、というスタニスワフ・レム『虚数』ゲーム版といった趣のユニークな連作短編。VRから人工知能、宗教まで多岐に渡るトピックをゲームというフィルターを通してそれぞれ実に上手に取り扱っていて、一級のSFとして楽