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日記一覧

 原題「Jack Glass」から些か盛りすぎな邦題ではあるけれど、なにしろこの作者、他の作品も直訳すると「塩」だの「石」だので売り出す羽目になるので、少々のデコレーションは許容範囲であろう。「宇宙的殺人者」はダサいが決して誇張ではないのであるからし

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 アイホールでの千秋楽。天井の木目や穴に異国の風景を幻視する3人家族(?)、引きこもってガラクタでロボットを作る男とその友人、誰にも読めない文字で日記を書く少女とその姉、次々場面は変わっても、ボロアパートの一室、中央にちゃぶ台という舞台は不動

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 あまりにも過酷に過ぎた前巻から、再起を目指す若者たちの物語として「正しく」ライトノベル方面に舵を切っている第5巻。内容的にはまだまだライトとは言い難いが、戦闘シーンもほぼ排除してこの緊張感、一歩一歩希望へとにじり寄っていく真摯な歩みが胸を

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劇団42歳♂/田中兆子
2017年08月24日23:39

 アラフォー男子5人が、大学時代以来の劇団を再結成、「オセロ」に挑む…不倫とかEDとか年相応にドロドロしたものの含みつつ、しかし男って奴ははいつまでたっても…という呆れ気味の優しい視線が基調になっていて、漫画的に各人のキャラが経っていることも

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「人類補完機構全短編3」。前の2巻がほぼ再録だったのに対し、こちらは文庫初収、初訳作が多くてお得感あり。というか、こんな未知の傑作がまだ埋もれていたとは!と絶句したのが、表題となっている「キャッシャー・オニール三部作」こと「宝石の惑星」「嵐

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 当時16歳の平田オリザの世界一周自転車旅行記。これを早熟とは言うまい。この旅行は彼の人生の一過程でしかないのは、後の劇作家としての活躍を見ればこそ言えることだが、恐ろしいのは本文中で当人がそう断言していることだ。「この歳でこんなスゴイことし

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 初ウイングフィールド。40人キャパほどのビル6階ワンフロアぶち抜きの小劇場で、座席はベンチに座布団、という長時間の観劇は辛そうな空間。舞台はなんと本物の草花が植え込んであり、ベンチやロッキングチェア、リヤカーが備わった、ヒマワリやコスモス

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イェリネク原作。鏡面のような舞台のうえに、舞台装置は古びた蓄音機が一台のみ。舞台の手間は芝生が張られた2段の階段になっており、白い花が植えられている。手に手をとって入場してきた役者たちは皆白ずくめ、フードを被った姿はオバQめいてキュートでも

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 『羅生門』『人形の家』『アンネの日記』『少女革命ウテナ』をアメリカという器に注いで、ゴリゴリゴリゴリ器も割れよと混ぜ立てて、出来たドロリと真っ黒な液体、というが読了後の率直なイメージ。このタイトル(なんて素晴らしくも禍々しい、鉄棘がびっし

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 山奥の謎の屋敷で、座敷牢に囚われた白ずくめの少女の元に通い、「僕」はせがまれるまま「怖い話」を10年間語り続けた…伝奇物あるいはボーイミーツガール、といった開幕から一転、都市伝説を科学的に解体・解明するミステリに…と思ったら「情報生命体」

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 2115年からお送りするレトロゲームレビュー、というスタニスワフ・レム『虚数』ゲーム版といった趣のユニークな連作短編。VRから人工知能、宗教まで多岐に渡るトピックをゲームというフィルターを通してそれぞれ実に上手に取り扱っていて、一級のSFとして楽

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補陀落渡海/井上靖
2017年08月08日23:27

 講談社文芸文庫、「井上靖短編名作集」。 補陀落渡海(=漂流死)を強いられる仕儀となった中世の僧が、先達の殉教僧たちが死を目前にして見せた様々なる様相を回顧しつつ煩悶する表題作も然り、「死」をテーマにした作品が多い。「姥捨」「鬼の話」「道」と

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