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2026年06月25日06:27

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【昭和の落語家たち・番外篇】落語にアナーキーが通用するか。

【昭和の落語家たち・番外篇】
 落語にアナーキーが通用するか。
 小痴楽改め、春風亭梅橋、




 頭にヘンテコリンをひとり仕込んでおこうかねぇ。噺家だもん、まとまってばかりじゃつまんない。壊れたものもいるよねぇ。

 柳亭小痴楽、いま思い出してもいいねぇ。イタズラっぽい顔に、ややかすれ声、あきれる毒ギャグ、ときたもんだ。

 通じないと思うけど一応やっておくよ。大村崑の相手役だった佐々十郎、この人が瓜二つ。佐々十郎は吉本の芸人で大先輩。穏やかそうな話し方の芸人でした。あ、そう、そう、トリオ・スカイラインのボケ、小島三児もクリソツ。

 真打になって春風亭梅橋。いまで言うなら破天荒芸人の先駆けでございます、だよーん。でね、言っとくけど破天荒は長生きしないよ。
 どうしてかと言えば。破天荒ってのはどこかでカラダを使っているんだね。それが、長生きをさせない。右か左かってぇ時に、危ない方を選んじゃう。その連続だからねぇ。
 関西では、桂染丸がそうだった。酔った勢いで、車の前に飛び出した、あの噺家。残念だったねぇ。


 小痴楽、女だけどボーイズ物、東京あんみつ娘の柳家ほくろと世帯を持つ持つことになった。ナレソメは知らないが、本人は大変喜んでいた。
 さて、さて、新婚旅行ということで、綱島温泉へ。昼過ぎに当の温泉に入ったのだが、なにせ綱島だよ、なにもない。
「うーん、やることがねぇ」
 で、新婚でやるべきことをはじめた。他にしょうがない。
 で、少し経つとやっぱり
「うーん、やることがねぇ」
「な、他にないだろー」と、またはじめた。ま、ま、ま、新婚だ、どこも悪かない。
 また一時たつよ、ではと、女房の腰に手、持ちかけた
「バカヤロー、あたしゃ商売じゃないよ」
 思い切りどやされた。すかさず小痴楽、手を突き出す。
「こ、こ、これーぇ」
 手には千円札を握っていた。

 出世のキッカケは談志。いつも持ち上げてくれた。小痴楽のこと、好きだったんだねぇ。談志の沼部の部屋にそろって権八しちゃあ、悪戯のし放題。オシッコ・ビールはいつものネタでした。
「男は黙って、オシッコ・ビール」
 そうはいくかい。

 初代「笑点」メンバーに引き上げたのも談志の推薦。
 その時の推薦状がわりのギャグがこれ、伝説のネタです。

 まだ新宿に三越があった頃の話し。三越は、伊勢丹から駅に向かって手前100mの反対側にありました。小痴楽、新宿・末広の待ち時間に、(こっちの方が末広から近い)伊勢丹の屋上のペット売り場へと急ぐ。そこに居たのが九官鳥、この九官くんに口伝えの仕込み
「三越、三越、三越…」
と教え込んだ。かれこれ一月やっとおぼえたら、アレェ、九官鳥はいなくなった。
「おぅ、あの九官鳥、三越で見かけたよ」
 まさか。嘘でぇ。(おぼえさせたのはホントらしい)
 
 
 酒が好きで、飲み過ぎのトラブルがキリもない。破天荒は酒で壊れることが多い。良いとは言えないが、その一例。
 テレビの本番中、酔っている 所にライトがカンカンカン。隣の師匠、柳亭痴楽にもたれ込んで寝込んじゃった。師匠の痴楽、肩でつつくも寝っぱなし。楽屋に帰ると、局のプロヂューサーは怒鳴り込んでくるわの大騒ぎ。
 師匠の痴楽、カーッときて大声で
「このバカヤロー、手前(めえ)なんぞは金輪際、顔も見たくねぇ。
(破門だーッ)。名前を返せ」
 小痴楽、反省したんでしょうねぇ、深々と頭を下げた。
「師匠、すいません。それにしても名前、全部取っちゃうのは大げさです。
 せめて”小”を取るだけにしてください」
 根が人のいい痴楽、思わず「ウン」と言いそうになった。

 ついでに談志好みの謎掛けをひとつ(どうにもすごいよ)
「ビールとかけて、てんかん持ちの嫁との初夜と解く」
「そのこころは?」
「抜いたとたんに泡吹いた」

 酒の中でも、大のビール好き、
「ビールは俺には薬なんだ。ないと困るよ」
「それしたって、大変な量だよ」
「うーん、ビールを健康保険で売ってくんねぇかな」
 この時のシレッとした言い方が、この人の味だった。
 
 ハンフリー・ボガードを落語家にしたら、ちょうどこんな味か。
「昨日、お前どこに居た」
「古い話は忘れたよ」
 という乾いたトーンが、さあ、世の中に出ていくぞと思ったらトラブルが加速する。

 本番寝込み事件が元で、全テレビ局出禁をくらい「毎日が日曜日」になる。秋の陽は鶴瓶落しとはいうものの、逆落としのように運勢の陽が落ちる。
 さあ、そういう時は地道にしてりゃあいいじゃあないか、というのがカタギの意見。
 それができねぇ。
「できねぇよぉ」
 と唸りながら酒場に繰り出しちゃあ、飲む。

 談志、円鏡、小痴楽のトリオで営業に出ていたんだが、3人を見立て、
「円鏡と小痴楽の間くらいに一本の線があるんだなあ。そこを越えると、どうも続かねぇ」
 話としちゃあよくわかるが、薄情じゃないか。

 お笑いの半分くらいがアナーキーだとしたら、出来のいいお笑い芸人はいつも用水路に片足を掛けて生きている。
 間違って、ドッボーン。あ、あ、あー。流れて行っちゃうよー。
 上島竜ちゃん、ポール牧、泉和助、、さかのぼれば切りがねぇ。

「オウムを飼ってたのよ。このオウム、大変器用なやつで
 右足には青い紐、これを引くと、民謡を歌う
 左足には赤い紐、こっちを引くと、ジャズを歌う。
 悪いのが居たねぇ。青と赤、紐を入れ替えちゃった」
「どーだ、民謡とジャズでコーラスになったか」
「オウムは困ったよ。丸い目、くりくり。根が真面目なやつなんだ。
 しょうがねぇ、身を捨てるしかねぇと、本人からひっくり返ちゃった」
「翌日ギブスで立っていた」

 ま、ま、いろいろあるが謎掛けのすごさには、とても勝てないね。
 父親の臨終に立ち会わず、ずっと居酒屋で飲んでいた。そいつを談志がせめると、
「俺がいたって治らねえ」
 と返答した。その頃から、談志との付き合いが疎遠になっていった。
 1984年(昭和59年)、49歳で亡くなった。

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