今年の大谷は、どのように攻められて、どのように克服したのか、そのあまり目には見えにくいところ大事なところを抜き書きします。
通してみると、なかなか大谷を攻める側にも工夫というか紆余曲折があって面白味があったと思います。見る側もその視点を理解して、見えざる戦いに参加するのも闘う大人・大谷と一体となる新しい面白さがあると思いますよ。
○
今シーズンは手術明けからはじまりました。手術は右肘ですよね。そこでMLBの投手たちがこぞって企てたのが、インコース攻め、それもインハイ中心の攻めです。
シーズン頭にも説明しましたが、インハイはカーショーが
「俺は、もう一生あそこに投げないぜ」
と記者に話して大受けさせた太谷の言わば飛ばすツボ。MLBに上がる直前のWBCでも、ゴーンと特大の打球を打って東京ドームの天井にぶつけた推定145m以上と言われた打球もインハイだった。当時も(推定飛距離)日本一とか言われていました。
○
そこでわかること。
インコース攻めは、悪く言えばイジワルな「右肘攻め」だったわけです。インコース打ちに不可避な右肘のタタミが術後の右手でうまくできるか。
「どーだぁ、できるか。
おいらは行くぜ、カモーン、ギューン」
投手から、大谷の打者生命を問う企てだったのです。
カーショーの発言以来、何年もインコースは少なっていたのも事実。そのため大谷はベースに踏み込んで打っていた。反対方向のホームランは大分この踏み込みに負っていました。そこでグィッと大谷の体を起こす役目でもあります。イジワルもイジワル、シーズンはじめ、なんと半数以上がインコースでした。
○
で、大谷はどうしたか。(見る人が見ればわかるのですが)
カッときていました。
インコースのボールを思い切り引っ張りに出ました。
「舐めるなよ」
という相手投手への意思表示だったような気がします。振っていたねぇ。ブーン、ブーン。
でねぇ、ライト側に切れる特大ファウルが多かったのはそういう理由。頭2週くらいは、ライトに飛べばみんなファウル。
「あーあ」
たびごと日本中がため息でした。
○
きっかけはセンター左の方向へのホームラン。ラインドライブせずに、すーっと伸びてバックスクリーンの横に飛び込みました。
「あー、そうか」
無気にならずセンター中心のスイングに戻すことで、インコースの打球がフェアゾーンに入ってきて、今シーズンはじめてのホームラン増産体制ができました。
○
すると次に、相手がトライしてきたのは左投手攻め。これは、相手チームの監督の企てですね。
これがなかなか効果があったのは事実。打率が.310から.280まで激落ちしました。
これは、実は2段階で攻め込まれていました。
単なる左投手先発から、
「これはいけるぞ」
と日本の野球で言うところの
「大谷ところでワンポイント左」
まで進化しました。攻め方も徹底してきて、ついには左の大きなスライダー連投でした。
(MLBは、配球はベンチ発なのでスライダー連投はつまりベンチ作戦です)
○
大谷の方も、左対策に2段階で対処しました。
まずはじめに心がけたことは左手をよーく伸ばすこと。
引っ張り込まない打法なので、(特に反対方向の打球の)距離が落ちます。それをカバーするために左手をよーく伸ばすことで解決を果たそうとします。
ところが、だ。
左の、サイド気味の、スライダー連投という3段階作戦に押されまくられます。
シカゴ・カブス戦だったかな、捕手のミットに大谷のバットが当たった。
「あっ、立ち位置がクルっている」
と思いついたのだと思います。バットでベースからの距離を測る動作をはじめます。
「インサイドのボールをギリギリ打てる距離を測り、アウトサイドも対処できることを確認する」
というルーテインのはじまりです。
バットで距離を測ることでさらにもうひとつ工夫が生まれます。投球との距離感を作り直します。そこで生まれました。
(対左投手だけの)半足分のオープンスタンスです。
これで連投されるスライダーを追っかけない、じっくりボールを見ることができる安定したスタンスが生まれました。追っかけないことで、3振は一気に減ります。
そして「左手をよーく伸ばす」フォームがここでも生きてきます。オープンでもバットが届くので、泳がずにボールを待つことできるのです。
そして、あの6打数6安打までくるのです。はい。
○
えーと、結論としましては、打撃術から見ると、野球小僧はまさにプロのイジワルな「右肘攻め」という洗礼さえ乗り越える「立派な大人だぞー」と思う今年の大谷なのであります。えらいなあ。
ログインしてコメントを確認・投稿する