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2024年08月08日02:18

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オトコはシビレて生きていく。

 オトコはシビレル生き物なのさ。人生、いろんなとこでシビレて生きている。情けねぇ。どうしてシビレルかと聞かれれば、気が小さいせぇかねぇ。テキメンに効くシビレ薬がねぇ、体に入っちゃって、もう鉛の体、どうにも体が動かなくなるんだ。

 オリンピックでは、スペインのラーム君。ゴルフで最終日のリーダーだったのだが後半、手ひどくシビレ薬にやられた。

 パターを持った。
「さあ、行こうか」
と、こころに決め振ろうとするのだけど、手が動かない。
「アレェ、どうしたんだ」
素知らぬ顔で、エイッと少し無理をすると、手はまるでビコンとバネ仕掛けのように動いて、球は思いもかけぬように走り出す。
 11番のこのスリーパットがはじまりで、12番、14番とボギーを続け、メダル圏外に
「サヨーナラー」
と去っていったんのだが、こらえている様子がよかったねぇ。やさしい大男、そのままだった。

 オトコは闘って生きていく。
 ま、仮に二人で勝つか負けるか1/2の闘いを続けていたとしよう。それを10回も続ければ、それだけで勝ち続けるのは1/1,000を超えるひどい確率になってしまう。勝ち続けるってのは、そりゃあもう大変なことなんだ。「男はつらいよ」とは、ここからはじまる。
 永遠に勝ち続けることが無理だと知るとオトコはどうするか。やさしくなるんだよね。(一部、馬鹿者を除く)

 一番簡単に言えば、オトコの宿命を知るんです。オトコは負けるために生きている、という数学的な「真理」がそのまま人生的な「心理」に投影されるのさ。

 まれに勝ち続けるオトコがいる。日本の中で勝ち続けてきたオトコとされているのが長島さんなのだが、その長島さんにしても生涯打率.305でしかない。数字の上では7割が失敗している。ほーら、大変なんだ。
 もう一人シビレないオトコされるのが「喝ッ」のおじさん、張本勲なのだが、その張本も優勝を決める試合で犠牲バントのサインを無視し
「張本、お前なんだ、あれは」
と試合後の監督室で生涯打率.305の長嶋さんにモーレツなビンタをされている。さすがに「喝ッ」おじさんも、長嶋さんにはシビレテ勝てなかった。

 大鹿マロイという名前を見てすぐ誰か思いつく人は、相当なチャンドラー通だろう。やさしい大男と言えばヤツを置いてない。
「ヴェルマはイイ娘さ、俺を騙すなんてあるわけないさ」
と信じながら(当のヴェルマに撃たれ)死んでいく。

 さてシビレ薬はどこから来るのか、いつ注射されるのか。(某有名ジャーナリストならお酒の中に入れるのだろうが)普通、知らぬまに打たれている(または飲まされている)。

 失敗した自分の姿を想像して「先に進みたく、なくなる」という説がある。どうやらこれが有力で、心理的負担がシビレ薬に化学変化するというのですね。

 人は、自分を少しだけ成長させて自分を見ている。自惚れなのかな、しかしその自惚れを目指すことで進歩は生まれるとも言えるのだが、失敗した自分に出会うと、自惚れがモロくも壊れ屈辱感が生唾のようにこみ上げてくる。
「あー、こころが苦いなあ」
この味がシビレ薬なのか。
 ここで一つわかることは、自分が自惚れていることが自覚できない人もいる、ということだ。自惚れが自覚できないし、やさしさがわからないヤツは前出の(一部、馬鹿者)と定義してよいのだろう。

 シビレ薬を止めるには、すぎた自惚れを止めることだ。これが簡単な答えのようだが、なかなかそうはいかないよ。江戸時代から言われていることわざがある。
「カサと自惚れのないオトコはいない」
などと少々汚いが有名な一文になっている。自惚れのないオトコがいたら呼んでこい、というわけだ。(このことわざが瞬時に理解できたら、あなたは相当の江戸通です))

「では、どうしたらいいんだろう」
 えぇ、えぇ、大丈夫、うまい方法があります。
「高田純次方式」です。すべてのシガラミとサヨナラして、アナーキーな立場になっちゃうんですね。美しく言えば、根っからの自由人。そうすると先行きの心配なんてサラサラとなくなる。自分のあるがまま。至極ご気楽になれると思うんだ。

 シビレそうになったら
「適当ーっ、適当ーっ、適当ーっ」
と三回も叫べばもうオーケーだ。とたんに体が軽くなる。

 あ、そーだ、スペインのラーム君にどうやってこれを教えたらいいんだろう。わかるかなあ。画面では
「ぼくはいいんだ。けれど、スペインを失望させちゃった」
とラーム君はおだやかに話してた。
 いい人は高田純次になりにくい。そこが、この方式の欠点かな。
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