もう一度、風が吹くと、ターンブルウィードはクルクルっと転がって行った。
決闘の現場がすっかり見えてきた。
遮るターンブルウィードがなくなった後には、うなだれて両膝をついたガンマンがいた。シェーンだった。
「どうしたんだ、撃たれたのか」
「大丈夫だ。相手はどうなった。教えてくれ」
相手とは西村康稔のことでシェーンの抜き打ちに腰を抜かしストンと尻餅をついた、なんとも情けない格好だった。慌ててレジ係の奴がすっ飛んできて覆いかぶさった。シェーンの狙いはハズレ、弾はレジ係の腕をかすめていった。
シェーンの方だが右膝をかすっている。世襲の誰かが隠れて射った弾だった。
さあ、町のみなさん、シェーンこと戦後民主主義くんは負けたのだろうか。シェーンは歳だし日本中を流れてきた長年の疲れが出ているんだ。
世襲の悪玉、西村は腰が抜けた無様な姿を町中に晒すことで、もうさほどの親分風を吹かすことはできないだろう。だと、良いのだが。
「民主主義というのは、実にいいもんだけど時間がかかるんだよ」
昔、この町の町長だったハヤト池田が、繰り返し町の人に言っていた。時間がかかる、その長い時間の中でいろんな奴が現れて不正が行われたりする。
「そういうのはねぇ、税金なんだ」
ハヤト池田は意に介せず言うのだが、放っておけば主客転倒してしまう。
確かにシェーンこと戦後民主主義くんは歳だ。だがね、歳だからと言って、見限るのか。そいつはだめだ。それじゃあ薄汚ねぇ世襲野郎どもと同じになってしまう。
それにシェーンに隠し弾を射った世襲もそのままで、何の手も打っていないじゃないか。
「お前(めぇ)なあ、世の中ってのは、こいつをしっぱるだろ」
長老の彦六ジィが現れて、軒に下がるヒモをひっぱった
「ほら、ゾロゾロ出てくるんだ」
ヒモの後ろにはいろんなものが「これでもか、これでもか」とつながっていた。
「世襲ってのは、ゾロゾロなんだ。簡単にゃぁ〜すまねぇよ〜」
と話しているとシェーンは傷ついた足に血止めのバンダナを巻き、馬に乗り、町を出ようとしているところだった。
「いいのか、いいのか、このままで、いいのか」
さあ、町のみんなどうするんだ。
やにわにひとりの少年が駆け出して行った。小さな手をラッパのようにして叫んだ。
「シェーン、カムバック」
シェーンこと戦後民主主義くんは振り返ってこちらを見た。遠目だが泣いていた。年老いた自分が悲しかったのか。
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