2006年09月05日の日記を再掲載したものです。当時とても好評でした。
[ぼくのセンチメンタル・ジャーニー 1.江利チエミ]
その日は、伊勢佐木町でしたたか飲んでいた。
盛り場のよくあるバーで、なじみ客でほぼ一杯というような雰囲気の店だった。その店の有線から、突然、江利チエミの歌ばかりが流れ出した。それは、いつまでも終わることなく果てしなく続いていた。
江利チエミはぼくらよりずっと上の世代で、ベース回りの少女ジャズ歌手がはじまりだった。それも、ここ横浜の基地がスタートだったという。ぼくは、上の世代ということもあり、そう気にしてはいなかったのだけど、ワンフレーズがずーと心にくっきり残っている歌があった。どうしてなのかわからないままにしておいた歌だった。
あたらしい客が入ってきて、そのうちのひとりから理由が知らされた。
「きょう、江利チエミが死んだんだよ」
「さっきニュースでやっていた」
一瞬、客席は静まったけど、ゆっくりゆっくり元にもどっていった。けれど、そ知らぬ顔をしながら、みんな江利チエミを聞いていた。
「去りにしぃ〜夢」
ぼくが気にしていたフレーズが流れた。淡いワルツの曲は、その部分だけ、おどろくほど張った声で彼女は何かを思いきるように歌っていた。
そうだ、江利チエミは夢は去っていくものだと、この歌を歌いはじめた子どもの時から知っていたのだ。
何か答えがでたような気がした。
夢は、あの人のこと、
そして、歌はテネシーワルツだった。
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