日本では，トランプ氏の罵詈雑言ばかり目立つので，少しばかり援護射撃。一般の日本人には，なかなか理解してもらえない保守的なプロテステントのキリスト教徒の観点について述べます。
保守的なプロテステントのキリスト教徒にとって，人生の目標は，理念的には，神の栄光のために生きることである。そのため，富裕層であっても，浪費は戒められ，事業を興して雇用の機会を増やし，飢えるような状況を防くごとを実践しなければならない。マックスウェーバによって議論された初期の資本家は，”天国に富を積む”という感覚で，浪費を戒め，資本蓄積に邁進した。近代資本主義が，プロテステントが多数を占める英独米で発達したのは，決して偶然ではない。
この傾向は，プロテステントのなかでもカルバン派に顕著で，
「お前の名前は天国で神様のノート(閻魔帳みたいなもの)に救われる者として書かれているのだから，そのことをよく自覚し，感謝して，神様のために一生懸命働きなさい。そして，神様に喜ばれるように，自分の能力は他人のために使うのです。それが神様に選ばれた物の責務なのです」
と説かれる。
この”浪費を戒め，天国に富を積む”という感覚は，今でもまともなアメリカ人には残っている。その典型例は，ウォーレンバフェット氏。バフェット氏は，とんでもない富豪でありながら，普段の生活は質素であるとされる。オマハの自宅は，（日本人の感覚からからすれば広大なであるかもしれないが），まわりの家とさほど変わらない。好物は，ハンバーガーとコカコーラとされている。車も，キャデラックで，富を見せびらかすような高級車ではない。一時は，スバルのアウトバックに乗っていると伝えられたが，本人によって否定されるまで，誰も不思議におもわなかったくらいである。
この様な倫理感をもつ人たちは，”福祉たかり”の下層階級の堕落しきった生活，タックヘブンなどの所得を移転し税金逃れを行うグローバル企業やウオール街の金融資本のエリートたちの生態を目撃して，激しい嫌悪と怒りを感じていたことは間違いない。一刻もはやく，このようなだらけきった”罪み深い生活”から救わなければならない。
なお，余談ながら，4年前の大統領選挙のとき，トランプ氏は，
America must be born again
とよく演説していた。これは，日本語ではわかりにくいですが，聖書のヨハネによる福音書３章の7節
You must be born again
の引用である。日本人の私が気が付くくらいだから，アメリカ人が気が付かないはずがない。残念ながら，日本版（新共同訳）では，
”あなたがたは，あらたに生まれなければならない”
となっており，againのニュアンスが消えている。そのため，日本のマスゴミは，全くこのことについて言及していない。人づてに聞いたところによると，原文のコイネーギリシャ語からすると，意味的には，日本語版の方が元の意味に忠実なようある（わたくしは，コイネーギリシャ語が全く分からない）。英語版からの印象から受けた印象を一番近い日本語で表現すると
”あなたがたは，新たに生まれ変わらなければならない”
となる。上記のトランプ氏が訴えた表現も，伝統的なプロテスタントの倫理感と，トランプ政権以前のアメリカの状況を考慮にいれると，痛いほどよくわかる。
�△紡海�
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