日本では誤解されている方々のおおいですが，保守的なキリスト教徒は，国境を否定するどころか，尊重しています。その典型例として，スイス人法学者のヒルティは，下記のように主張しています。
�―�君が属している同じ国の人々のもとへ行くがよい。なぜなら，神は「秩序の神」であり，ひとが，一つの国，一つの民族に属することは，神に秩序であって，その秩序を全く無視しようとする国際的なもの，人道主義的なもの，あるいは社会主義的なものは，あらゆる真の成功の唯一の源である神の祝福を受けることができないからである。
-----幸福論，３巻 p247 岩波文庫
�△劼箸呂修譴召貅�分の型を完成しなければならない。どこの国の人間か，まるでわからないような人は，不愉快な現象である。だから，国境近くの住民はいかがわしい性質をもっているのが多い。多くの言葉を鼻うことも，一般に，天才のしるしではなく，また優れた性格のしるしでもない。最もいかがわしい者は，一つの文章のなかに，いろんな国の言葉をごちゃまぜにする人である。そういう人は，さらに教養にもかけている。
-----幸福論，２巻 p113 岩波文庫
つまり，はるか昔の聖アウグスティニス以来，神の国と地上の国とでは，根本的に異なっていると考えます。
神の国……愛と慈愛に満ちた神聖な世界
地上の国…情熱。欲，罪にまみれた世界
したがって，地上の国で正義に近いものを実現するには，必要悪としての物理的強制力をもった国家権力が必要であると考えます。これは，根本的に，
「あらゆる人間は罪にまみれ，神の栄光には届かない」
というパウロの主張に基づき，
「人間は不完全であるがゆえに，共同体において社会の秩序を維持する方法は，物理的強制力をともなった国家権力に頼らざるをえない」
と考えているからです。したがって，コズモポリタン的な考え方は，保守的なキリスト教徒には，まったく受け入れることができません。不完全である人間が織りなす現実の世界は，愛と慈愛に満ちた天上の神の国ではありません。情熱と欲と罪にみまわれた世界です。このような現実の世界において，社会の秩序を維持している国家権力の基盤を完全に否定することになるからです。
以上の観点から，私は，コズモポリタン的な考え方は，受け入れることがきません。多分，米国の保守層の考え方に近いのではないかと思います。
�＼�府の必要性
政治的議論は常に罪人たちの衝突であって，正しい人間と罪びとの衝突ではない。罪人である人間同士が自発的に大規模な協調をはなることは不可能。政治秩序をつくり維持するために，イエスの道徳を適用することはできないためである。共同体において社会の秩序を維持する方法は，物理的強制力をともなった国家権力に頼らざるをえない。法を確実遵守させるために，必要悪としての物理的強制力を有する政府が必要。
�⊃祐屬慮続�
人間の活動は，高尚な理想に駆り立てられたものであっても，常に罪によって損なわれていることを意識すべき。「善を声高く主張することは簡単です。問題は，善を行う土台を台無しにすることなく実現するか」にある。不正義は，間違った判断や行動ではなく，人間の「ウヌボレ」から生じる。
以上�´△砲茲蝓だ�府の活動は，物理的強制力による正義と秩序の維持である。コズモポリタン的な考え方は， 人間の「ウヌボレ」の典型例である。したがって，世界を異なる政治コミュニティにわけることは，道徳に適っているだけでなく，人道的で平和的な世界秩序の基盤でもある。
ログインしてコメントを確認・投稿する