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2019年09月23日20:16

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心をつくる秋のはつかぜ−類聚西行上人歌集新釋(002)

『死霊』を積ん読に戻して本の整理を再開したら、『新古今和歌集』(日本古典全書・1959年)が出てきて、つい「仮名序」を読んでしまった。この「仮名序」については、いずれじっくりと読み返してみたい。

ついでに「秋」の巻にも読み進んでしまい、こんな歌を見つけた。

「おしなべて物をおもはぬ人にさへ心をつくる秋のはつかぜ」

西行法師の歌だけれど、彼の『山家集』で読んだ記憶が無い。『西行全歌集』(岩波文庫・2013年)で調べてみたら、この歌は、「宮河歌合」と「西行法師歌集」に載っていて、「山家集」には載っていないことが分かった。

そんなこんなで西行の歌を眺めているうちに、今度は尾崎久彌の『類聚 西行上人歌集新釋』(東京修文館・大正12年=1823年)を読んでみたくなった。尾崎は江戸軟派文学を専門としているが、なぜかこの西行の歌集の注釈書を一冊だけ出している。これが明治の江戸研究家らしく、昭和以後の国文学者の研究書などとは趣が違っていてなかなか面白い。およそ100年前の本だが、製本がしっかりしていて、今でも読むに困らない。

先の歌も載っていた。
「おしなべて」と一般論のような語り口であるが、尾崎は、この歌の「人」とは「西行自身也」と断じる。

「我巳(すで)に秋風と無関心ぞといつた、冷眼視した、然し有情の昔に帰りたいやうな矛盾した気分が、表されてある。」(p.141)

西行の真情に踏み込もうとする尾崎らしい解釈だ。

「厭(いと)ふ世も月すむ秋になりぬれば、存(なが)らへずばと思ふなるかな。」(p.180)

これも西行の「真情」だと尾崎は言う。

なんてことをしているうちに「読書の秋」となってしまい、本の整理は全く進まないのである(笑)。

◆類聚西行上人歌集新釋に関する日記
(001)(2014年03月15日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1923201711&owner_id=2312860
◆和歌・歌集(家集)・歌人に関する日記の目次(2014年06月01日)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1927370303&owner_id=2312860

◆尾崎久彌(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E5%B4%8E%E4%B9%85%E5%BD%8C
◆尾崎久彌「類聚西行上人歌集新釋」
https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=29256634

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