榎本武揚ブームである。
と言っても、僕だけの、いわゆる「マイブーム」だけれど(笑)。
まず、佐々木譲の『武揚伝』の「決定版」(上)(中)(下)が中公文庫から出た。
この本は、元々は2001年に上下2冊の単行本が出て、2002年には新田次郎文学賞を受賞し、2003年には4分冊の文庫本が出ていた。僕は、いずれも持っている。それを「新史料や新しい研究成果を踏まえて大幅に加筆修正し」、2015年に3冊の単行本の「決定版」として再刊した。そのうえで、今回文庫本になった。
この物語は、箱館戦争の終結、つまり榎本が率いた旧幕府軍が、函館の五稜郭に籠城したものの、結局は維新政府軍に投降するまでが描かれている。
実は、この史実と僕の母方の「村山家」は、深く関わっている。
箱館における榎本軍は財政基盤に乏しく、理由をつけては住人、商人から軍資金を徴発していた。村山家も、上納金を要求され、多額な借金をしてまで、これを拠出している。このことは、維新後の村山家の没落の原因のひとつとなった。
しかし、村山家が没落してくれたことで、僕の母は、貧しい開拓農民の三男坊にしか過ぎなかった僕の父と結婚したとも言える。つまり、榎本軍の敗北が無ければ、僕は生まれてこなかったのである(笑)。
そんなこともあって、僕は榎本武揚に以前から興味を持っていた。
戊辰150年の年にあたるためか、榎本関係の著作の出版が続いているような気がする。
今年に入って『銀河鉄道の父』で直木三十五賞を受賞された門井慶喜には『かまさん』(祥伝社・2013年)という著作があるが、これも武揚を主人公としたものだ。これは2016年に「榎本武揚と箱館共和国」という副題を付けて祥伝社文庫からも出されている。
先日、本屋に行ったら、岩波ジュニア新書で黒瀧秀久『榎本武揚と明治維新−旧幕臣が描いた近代化』という本が出ていた(2017年12月)ので、買ってしまった。
また、図書館に行ったら、ロシア文学のコーナーに『駐露全権公使 榎本武揚(上)(下)』(群像社・2017年12月)があった。カリキンスキイというカザフスタン生まれの作家が、外交官としての榎本を小説で描いたものであった。
それぞれの感想については、いずれ記すこととしたい。
◆佐々木譲『武揚伝』「決定版」
https://www.sankei.com/life/news/151206/lif1512060023-n1.html
◆門井慶喜『かまさん』
http://d.hatena.ne.jp/naozi/20161101/1478001343
◆黒瀧秀久 『榎本武揚と明治維新−旧幕臣の描いた近代化』
https://www.iwanami.co.jp/book/b330658.html
◆カリキンスキイ『駐露全権公使 榎本武揚』
http://www.gunzosha.com/books/ISBN4-903619-82-8.html
https://markezine.jp/release/detail/834586
【追記】2018/05/03
榎本軍の軍事顧問だったフランス人を主人公とした小説に以下がある。
◆佐藤賢一『ラ・ミッション−軍事顧問ブリュネ』(文春文庫)
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