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2017年11月23日23:03

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維盛入水の歌

平維盛(たいらのこれもり)
「生まれては終(つい)に死ぬてふ事のみぞ定めなき世に定めありける」

【訳】
「この世に生まれると、最後には死ぬということだけが、無常であるこの世において、唯一の決まり事なのだなあ。」

上宇都ゆりほ『源平の武将歌人』(笠間書院・2012年)p.84より

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笠間書院が「コレクション日本歌人選」というシリーズを出している。どの分冊も面白く、図書館で借りては読んでいる。読んで面白ければ、古本屋などで探して買っている。今、読んでいるのは、上宇都ゆりほ氏による『源平の武将歌人』という一冊。

武将が何故、和歌を詠むのかについては、小川剛生氏による『武士はなぜ歌を詠むのか−鎌倉将軍から戦国大名まで』(角川選書・2016年)という文字通りの本が詳しく論じている。
もっとも、歌を詠む動機は、時期により人により、さまざまでもあるだろうが。

源平武将の歌は、藤原定家のような職業歌人の歌に比べれば、秀歌と呼べるものは少ないかも知れない。しかし、歴史の局面において死に臨んだ心境を詠んだ歌には、優劣という評価とは別に、心情に迫るものがある。冒頭の維盛の歌も、内容は当たり前のものであり、技巧という面では味わうほどのこともない。
ただ、愛妻との再会も叶わず、27歳で入水するに至る直前の歌と思えば、また違った読み方ができる。

この歌の出典は、「源平盛衰記 巻四十」ということになっている。
維盛の那智沖での入水については、「平家物語」でも読んだことがあったが、この歌については記憶が無い。調べてみると、岩波文庫版や角川文庫版の「維盛入水」の場面には、この歌は載っていなかった。

(つづくはず)
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