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2017年11月12日20:18

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オスプレイに固有のリスク(後方乱気流)

今日の日記は、引用が長くなるため、結論を先に書く。

【結論】
・2012年6月13日にフロリダで発生したオスプレイ(CV−22)の墜落事故は、オスプレイに固有の機体特性の故に発生したものである可能性がある。
・オスプレイの運用には、他の固定翼機や回転翼機とは異なった種類のリスクがある。
・この「墜落事故」に対する防衛省が作成した「分析評価報告書」では、この点が意図的に過小評価されている。
・オスプレイが有する固有のリスクを過小評価するのであれば、自衛隊において導入されるオスプレイも「墜落」するであろう。

【論拠】
防衛省のホームページ(HP)では、自衛隊における導入も意識してであろうが、オスプレイに関する情報がかなり詳しく掲載されている。

■オスプレイについて(防衛省HP)
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/index.html

特に、事故に関しては、異例と思われるほどの情報が掲載されている。

■米軍オスプレイ事故関連(防衛省HP)
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/accident/index.html

ただ、そこに掲載されている情報には、一定のバイアスがかかっているように思われる。
その一例として、2012年6月13日にフロリダで発生したオスプレイ(CV−22)の墜落事故に関して「防衛省」が作成した「墜落事故に関する分析評価報告書」を見てみたい。

■事故の概要
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/accident/pdf/fl_3.pdf

■フロリダにおけるCV−22墜落事故に関する分析評価報告書
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/accident/pdf/fl_1.pdf

この事故は先行機が発生させた「後方乱気流」に後続機が入ったことにより、後続機が墜落したものだ。
この「原因」について、防衛省は「他の航空機でも起こりうる」ことを強調する。たった12ページの報告書の中で、このことは以下のように6回も繰り返し書かれている。

1−1「他の航空機でも起こりうる」
1−2「後方乱気流は軍用機だけでなく、あらゆる航空機に発生する現象」
1−3「前方機が発生させる後方乱気流による後方機への影響は、オスプレイに特有のものではなく、航空機全般に共通する特徴」
1−4「後方乱気流とは、飛行中の航空機が作る渦によって発生する強い乱れを持つ空気の流れであり、全ての航空機の飛行中に発生するもの」
1−5「後方乱気流は後方機の安全に重大な影響を及ぼす恐れがあるため、民間航空機の場合でも、特に前方機との間隔が狭まる空港への進入時及び離着陸時においては、前後の航空機が必要な間隔を維持するよう十分な注意を払うことは安全を確保する上で重要な要素となっている。後方乱気流は、概ね、航空機が大型で重く、飛行速度が遅いほど強く広範囲に及ぶ傾向にあり、後方乱気流に巻き込まれた場合に飛行の安定に影響を受けやすいのはより小型の航空機である。また、同一規模の航空機であれば、概ね低速の時ほど後方乱気流が強い傾向にある。したがって、離着陸時の大型の民間旅客機は、かなり強く広範囲に及ぶ後方乱気流を発生させることになるため、航空機は航空機間に一定の間隔をとる等の運用方法が規定されており、後方乱気流の影響を受けないよう、運用により危険を回避している。」
1−6「一般の固定翼機が後方乱気流を受けた際の現象と同様の現象が生起していたと考えられる。」

確かに、ここに書かれていることに「嘘」はない。
ただ、オスプレイが起こす「後方乱気流」に、同型機に固有の特性が無いのかどうかが十分に検討されているとは言えない。
たとえば、飛行機曳航されているグライダーを僕が操縦するとき、先行する曳航機の後方乱気流には(意図的に)何回も入っている。曳航期の後方乱気流を経験することは、訓練科目の一つにもなっている。グライダーは曳航機の60メートルほど後方を飛行するが、それほどの危険を感じたことは無い。

オスプレイのような特殊な形態で揚力を発生させ、特殊な運用をする機体では、その特殊性による後方乱気流の特性が分析されるべきだと思う。しかし、この点についての「分析」は、以下の4点の指摘がなされているものの、十分なものであるとは言い難い。

2−1「米側報告書では、CV−22の後流のモデル化が不十分であり、マニュアルにおいて、風洞実験が限定的であることや、V−22の後流の正確な形状について実飛行で特定されていないことが指摘されている」
2−2(マニュアルにおれる)「後方乱気流の影響を示すグラフは、375ft後方までの影響しか示されておらず、今回のように1番機から1200ft離れた事故機が後方乱気流の影響を受ける可能性があることが明示的に示されていない」
2−3「後方乱気流が相当離れた位置まで影響を及ぼす特性を持っていることは明確に示されておらず、操縦士に誤解を与える可能性があると考えられる」
2−4「米側報告書では、現行のCV−22シミュレータでは、前方機から生じる後方乱気流が後方機に与える影響を再現することができないことが指摘されている」

マニュアルにも影響が明示されておらず、シミュレーターでの訓練もなされていない。
これでは、パイロットが後方乱気流を避けるために十分な認識も技量も持てず、そのために墜落事故を起こしたとしても、パイロットのみを責めることは出来ないだろう。

ところが、報告書では、「主たる事故原因」は以下のようにパイロットに帰せられている。

3−1「副操縦士が、事故機と1番機との相対位置を誤認識したことにより、十分な高度差を確保せずに事故機を旋回中の1番機の後流の中に位置させたこと、また、機長も同様の誤認識によって、副操縦士に機体の位置を修正させるか、自ら操縦することにより事故機を後流から離隔させなかったことが主たる原因であり、人的要因によるところが大きいものと考えられる。」

「その他の要因」においても、以下のように「人的要因」が強調されている。

3−2「機長が副操縦士の練度や訓練の実施状況をリスク要因として捉えなかったこと、飛行計画が変更された際に、編隊長が飛行意図の伝達や適切な隊形についての指示を行わなかったこと、1番機と事故機の間の意思疎通が不十分であったこと、CV−22のマニュアルにおいて、後方乱気流を回避する適切な指示はあるものの、比較的距離が離れた位置における後方乱気流の影響について明確に記載されていなかったことも、事故に影響を及ぼした要因であると考えられる。」

これに対して、「機体の要因」については、次のように「認められない」としている。

3−3「本分析を通じ、事故当時、事故機や関連装備品に不具合があったことを示す証拠は存在しないことが確認されており、機体自体が本件事故の要因となったとは認められない。」

機体に「不具合」は無くとも、機体の「特性」が事故の発生に深く関与していることはあり得ることだ。しかし、 オスプレイの特性に関わる点については、以下のような記載が見られるだけであり、この点について踏み込んだ「分析」はなされていない。

3−4「CV−22の場合、垂直離着陸モードにおいては左右のプロップローターがそれぞれの後方乱気流を発生させ、固定翼モードにおいては主翼翼端が後方乱気流を発生させ、本件事故時のような転換モードでは転換の度合いに応じてこれらの後方乱気流が混合されることになる。」

このような不十分な「評価」は、オスプレイを導入するという政策的な意図のために、同型機のリスクを過小評価しようとするバイアスのためになされているという疑念がある。
オスプレイに特有のリスクを軽視するのであれば、自衛隊においても、墜落事故を未然に防ぐことは出来ないであろう。

■オスプレイ事故率最悪=普天間配備前の1.7倍−米海兵隊
(時事通信社 - 11月08日 22:00)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=4850634
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