昭和60年から平成に代わる頃、わたくしは今は潰れて跡形もなくなった、某証券会社の兜町ビルが仕事場でありました。今にして思えば当時はバブル全盛時代、証券会社の鼻息が最も荒かった時代でありましたね。その当時は「日本のウォール街兜町」というフレーズを良く見かけたものです。
それから時は流れて幾星霜（こればっか）、証券業界の総本山的存在（ちょっと違うかも）である日本証券業協会も、兜町からの移転を計画しているそうで。嗚呼、「荒城の月」の歌詞ではないけれど、「昔の光、今何処」でありますねえ。
＜引用開始＞
株式の街・兜町 今や昔 日証協、18年にも移転検討 新たな担い手探し課題
東京都中央区の兜町の「株式の街」としての側面が一段と薄れるかもしれない。国内の証券会社を束ねる業界団体、日本証券業協会が早ければ2018年中にも移転する可能性が出てきたためだ。証券会社の流出が続く兜町から業界の「顔役」が消えれば痛手で、新たな地域の担い手を探す動きが始まっている。
日証協は月内にも会員証券会社の経営トップらで構成する検討委員会の設置を決め、早期に移転先や費用負担の議論を始めたい考えだ。移転先の候補地としては同じ中央区内の日本橋や八丁堀などがあがっている。日証協が現在入居する「東京証券会館」は築50年が経過し、耐震性やセキュリティー対策の面で不安がある。建物内では公社債の売買参考統計値を集計するシステムなどが稼働しており、安全性の確保が協会の喫緊の課題となっている。
現時点では日本橋兜町や隣接する日本橋茅場町の周辺に日証協の要求水準を満たすオフィスビルはない。平和不動産が兜町で進める再開発を待つ案もあるが、第１弾のビルが完成するのは21年３月ごろ。計画自体はやや遅れ気味で、これも日証協が「脱兜町」に傾いた理由のようだ。引っ越し資金は「本部事務所移転基金」から引き出す案がある。同基金は誤発注に絡む利益を業界各社が返上してつくった「証券市場基盤整備基金（通称・ジェイコム基金）」を衣替えしたもの。設立から10年が経過するが、100億円超の資金が残っている。
日証協が実際に兜町から移転すれば、主要な関係者は東京証券取引所ぐらいしか残らなくなる。地場の中小証券はネット証券が台頭した影響で、廃業が相次いできた。日証協の会員のうち、兜町・茅場町に本店を置くのはいまや極東証券など13社だけで、東京地区の全会員のわずか約７％にすぎない。日証協の「脱兜町」の動きについて、多くの証券マンは冷静に受け止めている。ある準大手証券の幹部は「多くの証券会社は兜町の中小が再編しながら今の姿になった。思い入れはあるが、再開発後も当社が戻ることはない」と話す。ネット証券の幹部は「東京証券取引所があるので象徴的な意味は残るが、我々は『兜町』という古い体質から脱却することで生まれた」と突き放す。
その一方で、新たな担い手も育ちつつある。兜町の一角に、三菱ＵＦＪフィナンシャル・グループは金融とＩＴ（情報技術）の融合を目指すフィンテック企業向けの開発スペースを設置した。オフィスは深夜まで明かりがともり、泊まり込みで作業をする若者の姿もみえる。支援プログラムは第２期を終え、一部の新興企業は三菱ＵＦＪのグループ会社と協業に乗り出している。東京都は「国際金融都市・東京」構想で兜町周辺に資産運用会社などを呼び込もうとしている。
兜町を日本の金融センターとする青写真を描いたのは「日本の資本主義の父」といわれる渋沢栄一だった。その兜町はバブル経済に踊った後は衰退の一途をたどり、いまは証券会社の跡地にマンションが立ち並ぶ。再開発もテコに新世代のフィンテック企業などを誘致できれば、兜町だけでなく、金融業界・市場全体にも活気が生まれてくる。
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出典Web:
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170916&ng=DGKKZO21209710V10C17A9DTA000
現代の様に通信手段が発達した時代にあっては、何処に企業としての中心機能を置いても、何ら問題はない訳で。わたくしが兜町に通っていた頃は株式売買の立ち合いも、大勢の証券会社の立会員がいて取引を行っていましたが（「場立ち」と呼ばれていましたね）、今や完全に自動化されて、取引はモニター上の画面で行われている訳で。
そういう時代にあっては、兜町でなければならない理由は何もない訳で。わたくしの隙な作家の内田百�里�好んで使った、「時ハ変改ス」でありますね。嘗ての賑わいを体感した者としては、寂しい思いは否めませんが、これも時代でありましょう。
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