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2017年09月12日00:48

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新譜之雑談帖(その420)―カレル・アンチェル/ウィーン交響楽団録音集成(3CD)

カレル・アンチェルの名前を聞いて、ある種の懐かしさを覚える世代、というのはわたくし前後の年齢の人だけ、ではないかと思います。チェコ・フィルの常任を務めていながら、1968年のチェコ事件で辞任・亡命を余儀なくされ、最後は亡命先のカナダで病没。戦争中はアウシュヴィッツの収容所に送られ、本人は生き延びたものの、妻と子はそこで亡くなるという、悲劇的な生涯を送った事でも知られているか、と思います。
一方その指揮者のしての実力は、かのムラヴィンスキーが彼の演奏するドヴォルザークを聴いてショックを受けて、「自分はもうドヴォルザークを演奏しない」と云った、というエピソードがありますが、こうしたお話は「去る者日々に疎し」のことわざの様に、段々に忘れられていくのでありましょうか。まあ没したのは昭和48年、でありますからもう40年以上の前ですし。

さて、そんなアンチェルでありますが、わたくし実はアンチェルの演奏は余りピンとこないのが正直な所。先年、スプラフォンが「アンチェル・エディション」と銘打って、アンチェルがスプラフォンに残した全録音をリマスタリングして再発売した事がありまして。ムラヴィンスキーを感心させたドヴォルザークの演奏は、どうした事か第六交響曲・第九交響曲、スメタナに迄範囲を広げても「わが祖国」全曲くらいしかないのでありますね。この辺りは購入して聴きましたが、悪い演奏ではないものの、どうも今一つわたくしの琴線に触れてこないのにもどかしい思いをした記憶があります。尤もこれは、わたくしがアンチェルの前任者である、ターリッヒの演奏にどっぷり嵌って居りまして、ターリッヒの録音があるものは大袈裟に言えば「ターリッヒ・マンセー」で、他の演奏に中々素直に入っていけない傾向が強いからかも知れません。

それはさておき、ステレオ初期にアンチェルが、当時のフィリップスにウィーン交響楽団を率いて幾つか録音を残していたのは、LP時代にも見た記憶があります。只、わたくしが余り感心しなかった(ジャケット・デザインの点で)グロリア・シリーズで出ていたので、敬遠主義を取っていたらいつの間にか市場から姿を消してしまいました。
時は流れて幾星霜(大袈裟)、この程例の豪州エロクエンスから、ウィーン交響楽団との録音を纏めたものが発売になる、との告知が。ドヴォルザークは第九交響曲しかないのが聊か不満、ではありますが、それでもチェコ・フィルとの演奏の聴き比べが出来る、のはちょっと有難い所。昔は正直申しまして、全くと言って良いほど関心のなかった演奏なのですが、今の耳で聴いてみると何か違ったものが聴き取れるのではないか、と思う次第です。


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