『
ベイビー・ドライバー』
カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』とも言われるエドガー・ライトの新作だが、往年のヒットソングをバックにシンクロするのはむしろ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を思い出した。
“逃がし屋”を描いた映画はウォルター・ヒル監督の『ザ・ドライバー』やライアン・ゴズリング主演の『ドライヴ』という傑作もあった。
この主人公<ベイビー>も寡黙でストイックな凄腕ドライバー。
基本ボーイ・ミーツ・ガールの青春映画で、筋運びも特別珍しい印象は受けない。
大きく違うのは、<ベイビー>は運転中に音楽を聴き続けるということ。
カーチェイスと音楽のリンクはさぞかし撮影や編集が骨だったと思うが、どちらかというとミュージカルというよりもミュージック・ビデオを思わせる。
実際にMV作家にアドバイスをもらっているようだ。
(コインランドリーのシーンは『ラ・ラ・ランド』を感じたが…)
キャスティングが魅力的。
<ベイビー>役のアンセル・エルゴートとウエイトレス<デボラ>役のリリー・ジェイムズの息もあっているし、ノワール風タッチなのでケヴィン・スペイシーの存在も頼もしい。
何よりジェイミー・フォックスのメーターを振り切った悪のり怪演も見事!
エドガー・ライト監督が好みそうなサブカルネタには思わずほおが緩む。
サンプリング趣味の意外性は中々他の監督では思いつかないのではないか。
ただクライマックスから結末へ向かう道のりが説明臭く、カーチェイスほど切れ味を感じさせないのが惜しまれる。
音楽は<ベイビー>にとって“補助輪”のようなものだと考えていたので、補助輪を取り去ることで人生の階段を上がる演出があっても良かったのではないか。
最後に一つだけ言わせてもらえるなら、これを期にiPod classicの復活を!
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