『
メッセージ』
何とも不思議な美しさのあるSF映画。
インテリジェント系とでもいうべきか。
原題のArrivalでは伝わりにくいと考えたのか、ずいぶんとストレートな邦題になっている。(ただこれならば原題のカタカナ読みでも良かったのではないかと思うのだが…。)
原作はテッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」だが、だいぶ手が加えられえているようだ。
宇宙船とおぼしき未知の物体が地球に飛来して右往左往する物語で、そこだけを切りだせばこれまでに五万とあったが、切り口が少しユニーク。
(だからこそアカデミー賞作品賞にノミネートされたということだろう。)
言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)が未知の生物の原語解析を軍から依頼される。
ヤツらの目的は何か。今、地球上に住んでいる“人類”は惑星「地球」の先住民に過ぎないのか。
限られた時間の中で経験と知恵をフルに生かして解決を試みる。
歴史を振り返ってみると、我々は相手の正体を知らず憶測だけで無謀な行動に出て、ブーメランとなって帰ってくることも経験している。
疑心暗鬼となった人類が結束できるのかという問いは愚問だろう。
視点の妙味にこの作品の肝があるので曖昧な表現しかできないが、「こういう見せ方があったか」と膝を打つ手法は誰かが真似をするかもしれない。
人生には良いこともあれば辛いこともある。だが、それらを含めて肯定してこその人生。
哲学的なテーマを含んでいて、静かな余韻が心を打つ。
“記憶の断片”の描写に手がかりがあるのだが、巧みな情報操作がドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らしい。
(よく観察しているとヒントは出ているのだが、先入観の影に隠れて気が付きにくい。)
美術セットがよくできていてスケール感がある。
いかにも硬質なSFタッチがリアリティを醸し出す。
5月19日より公開
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