『
The NET 網に囚われた男』
韓国の鬼才、キム・ギドクのストレートな南北問題の映画。
小型のボートで漁業を営む中年男性が南側に流されて行く。
故意か事故か…スパイか亡命かといった二つの側面で南も北も疑心暗鬼になる。
境界線をめぐる分かりやすいキム・ギドクの問いかけだが、脚本を手掛けた『レッド・ファミリー』とは違いシリアスなタッチになっている。
さりげない南北の格差を見せながらもどちらにも暗部があり、それが統一の障害になっているということを伝えたいのだろうか。
北から南へ流れてきた男を“スパイ”と決めつけないと困る立場の者、幸福の価値観を物質的裕福と決めつける資本主義礼賛者などなど、それぞれの立場が<ただ家に帰りたい男>を翻弄する。
南北どちらにも一方的に善悪を決めつけないのも観るものに強く問いかける。
ギドクの映画では女性が重要な役割を担うことも多い。
本作も例外ではなく、南北政府の身勝手さに振り回される主人公は男性だが、陰で泣いているのは女性であるというのが印象に残る。
男が流される川の水に境界はなく、魚も自由に行き来しているのも何とも皮肉。
ただ寓話ゆえ分かりやすいのは結構だが、やや型通りに思えてしまうのがもったいないか。
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