さて。新しいリマスタリングによる、フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲全集の感想文を綴って来た訳でありますが。遂に（大袈裟）バイロイトの第九について感想文を書く順番となりました。この天下の名盤について、わたくしの如き一素人がどうのこうのと感想文を綴った所で、余り有益ではなさそうですが、それは百も承知で昔話を中心に記しておこうか、と思います。
昔々（またやまたや）、故芥川也寸志氏と黒柳徹子さんが司会を務めていた、『音楽の広場』と云う番組が某国営放送で放送されて居りました。何時頃の事か、正確には覚えていないのですが、クラシック音楽のベストセラーとして、ヴィヴァルディの『四季』が取り上げられた事がありまして。番組の中で、その頃のクラシックレコードの売り上げベスト3が紹介されていましたが、一位が（云う迄も無く）イ・ムジチの『四季』。二位がカラヤン／ベルリン・フィルの『運命』『未完成』（ＤＧへカラヤンが録音した、第一回目のもの）、そして第三位がフルトヴェングラーの『第九』でありました。クラシック音楽を聴く様になってから幾らか経っていた頃でしたが、前の二つがステレオ録音に対して、バイロイト盤はモノラルである事は知っていましたから、バイロイト盤の人気の高さに改めて感心した記憶があります。
御贔屓の演奏だけに、ＬＰレコードの時代からＣＤの時代に至る迄、国内盤やら輸入盤やら、リマスタリングだの新復刻だのの宣伝文句に乗せられて、随分何枚も同じ演奏のＣＤを買って来ていますが、如何にお馬鹿かを示す為に、恥を偲んで（本当はそれ程恥とは思っていないのでありますが）、何枚購入してきたか、おっちょこちょいのぢぢいぶりを（一部は既に言及した事がありますが）順不同で記しておこうと思います。
�々馥眸彌虍�盤：フルトヴェングラーの演奏が遂にＣＤになった、と云う事で購入したもの。ＬＰ（わたくしはそれまで長い間聴いていたのは、疑似ステレオ盤でしたが）とは格段の音の状態に呆然としたものです。
��ARTリマスター盤（輸入盤）：輸入盤で発売される、と聞いて購入。わたくしにとりまして、このART盤も、国内盤ＣＤと比べて格段であったので、腰を抜かさんばかりに驚いた記憶が。確かこのART盤から、演奏後の拍手が収録される様になったか、と思います。
��NAXOS板起こし盤（輸入盤）：ＳＰ盤の復刻で、担当者として名前を良く見るのがマーク・オーバート＝ソーン。この人の担当だと、復刻の出来が良い、と云う事になっているらしい、のですが、何しろ元のＳＰの音を知らないわたくしとしましては、それが本当なのかどうか些かの疑念を抱いて居りまして。そんな折、NAXOSから彼が担当した板起こし盤が出る、というので聴き馴れたバイロイト盤ならばその評判の程を知る事が出来るだろう、と思って購入。
特別凄い音が鳴る、と云う訳ではありませんが、国内盤並みの音は出て来る事が解ったので、まあ宣伝文句は妥当かなと云う判断を出しました。
�す馥眸彗�音入り盤：わたくしはこれ迄、舞台に登場するフルトヴェングラーの足音を収録した盤、と云うのは聴いた事がなかったので、つい血迷って購入。音質の点では、輸入盤には一籌を輸するものがありますが、万雷の拍手でフルトヴェングラーが中々指揮が始められない有様が記録されていて、これはこれで聴き物。
また、初出時のジャケット・デザイン（国内盤）が使われる、と云う事でこれにもつい負けてフラフラと手を出して仕舞いました。写真を拾って来たので掲げますが、この白地にゴシック風の文字が並んだデザインは、懐かしいですねえ。
�ズ２鵑料棺献螢泪好織螢鵐鞍廖Ц機垢力寝擦�（今となっては）古いので、限界はありますが、それでも音色や解像度の点で、随分良く聴こえる様になりました。個人的にはバイロイト盤は、第一楽章が少し迫力不足かな、とこれまで思って来たものですが、このリマスタリング盤で聴くと、（大袈裟に言えば）鳥肌物である事が解って、認識を新たにした次第。また有名な歓喜の旋律が遠くの方から聴こえてきて、次第に膨れ上がって来る、バイロイト盤を聴く一番の醍醐味の部分（とわたくしが考えている、3分過ぎからの部分）も、明瞭度が増して弦楽のパートが良く聴こえる様になり、大変満足のいく仕上がりになっているか、と。
今回の全集は（今日某塔音盤店に出掛けた所）売れ行きも上々である様で。そりゃあ、これだけの全集が、ＬＰ時代の廉価盤の御値段で入手出来るのでありますから、売れない訳がないのでありまして。わたくしのとりまして少なくとも当分の間は、バイロイト盤を聴きたい時やその他の旧ＥＭＩへのベートーヴェン録音を聴く際には、この全集があれば他は要らない、と云う事になりそうです。
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