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2016年11月09日23:46

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『永い言い訳』

永い言い訳

 3.11以後登場した、震災をきっかけにした映画の大半とはようやく違う衣をつけた作品が昨今出始めた感じがする。
ともかく揃いも揃って同じ方向の苦言ばかりでは、見ているこちらも飽き飽きし始めていたところ。
西川監督の観察眼は定評のあるところで、少し突き放した距離感に大人っぽさを感じる。

 震災後に数多くの遺族に対してインタビューや番組作りがあったが、どれもこれも美談にしようと判で押したようなものが多かった。
最初に結論ありきのような構成に西川監督は(ともすれば不謹慎と言われかねなくとも)少し異を唱えたかったのではないか?

 苦労を支えてきた妻があっけなく他界。
(最後のセリフが意味深)
愛情を持たなかった夫は感情を揺さぶられることはない。

 主人公の周囲では常に生死を掛けた生存競争が起きているのに、主人公・衣笠幸夫には全くそういう予兆が見られない。(原作から割愛されたエピソードがあったと後日聞いて、より確信した。)
これはすでに衣笠幸夫は(精神的に)死んでいることの例えなのだろう。
その証拠は最後に訪れる。

 池のボート、長いトンネル、坂道、シャボン玉など演出意図や心象表現などは分かりやすい。それにしても脚本、俳優、演出と見事に揃っている印象。
本当に俳優の魅力の引きだし方が巧みだが、とりわけ子役の上手さにはただ驚くばかり。
陽一役の竹原ピストルからは作為を感じないくらいにリアリティがある。

 企画協力に名を連ねる“師匠”是枝裕和監督作の『そして父になる』への西川監督からの返信のようにも感じる。

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