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2016年11月06日01:47

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備忘録『鳥類学者』『オリ・マキの人生で最も幸せな日』

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『鳥類学者』
http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=139

 当初、観るつもりはなかったのだが、1回目(合計三回上映)の後で流れてきたツイートの内容やプログラミング・ディレクターの矢田部氏のブログを見て、「これは!」と思い急遽チケットを取った。
http://www.cinemacafe.net/article/2016/10/31/44545.html

(以下引用)
ところで、このQ&Aで小さな動揺が会場を駆け巡ったのが、最初の質問のときだった。「日本人として同性愛描写が激しいことに驚きました。どうして同性愛を描いたのですか?」
(中略)
最後列の席から質問した青年は、壇上から見るに、学生か、とても若い男性に見えた。おそらく、本当にイノセントに驚いて、イノセントに質問したのだと思う。あまり欧米系のアート映画を見た経験がなく、知識も免疫も「常識」もないのだと思う。硬派のシネフィルが多く集まったであろう本日の上映では、完全によそ者だ。でも、そんな彼がこの作品を見に来たという事実が、僕にはとても重要に思えた。

(引用終わり)

 ツイートの流れとかもこれで理解できた気がした。
おそらくジョアン・ペドロ・ロドリゲス作品の初鑑賞。

 聖パドヴァのアントニオの逸話をジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督がウエスタン風に創作した映画。
ポルトガルでは知らぬものがないほど有名な聖人の物語。
(この点でキリスト教になじみが薄い日本人には不利な条件)

 Q&Aでも答えていたが、行儀よくまとまっている映画は作りたくないという強い意思がある。
それこそが彼を特別な存在にしているし、寄せ付けない要因にもなっている。
伏線らしいものも畳まないし、謎の解明にも消極的。
主人公フェルナンドはゲイだが、他にも中国人のレズビアン・カップルが登場したり、深夜の森で不気味なプリミティブな宗教の一団に遭遇したり、死も超越したような存在などあらゆる境界線を自由に行き来している。
とにかく自由に創造という名の翼を広げたアート作品。

 タイトルの鳥類学者は、主人公の職業でもあるのだが、監督自身が目指した職業でもあるそうだ。
物質文化に囚われている現代人だが、いつの時代でも自然回帰という側面はアーティストたちを捉えて離さない。

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 ジョアン・ペドロ・ロドリゲス(監督/脚本)、ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ(脚本/プロダクション・デザイナー)によるQ&A。

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ジョアン・ペドロ・ロドリゲス

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右:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ

 やはりというべきか(苦笑)、この日も同性愛に絡んだ質問が出た。
監督の「どうして日本人はそこにこだわるの?」という彼の常識と日本の常識は相容れないものかもしれない。


『オリ・マキの人生で最も幸せな日』
http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=131

 ボクシング映画といえば、ストイックで過酷な減量や勝利への高揚感など『ロッキー』的なスタイルが浸透しているかと思われる。
しかし、実在のボクサー<オリ・マキ>の伝記に基づく本作は少し違って、どちらかというとのどかなボクシング映画。

 1962年のヘルシンキ。地元では知られたボクサーのオリ・マキ。
アメリカチャンピオンを招いての試合が組まれる。
練習に集中しなければならないのに、ある女の子に惚れてしまって上の空…。
階級を下げるために減量に苦しむ中、試合の日が近づく。

 減量にも悩みはするが深刻ではなく、練習の間も好きな女の子と会いたいとさぼるくらいに自分勝手。悲壮感など微塵もない。
監督自身が周囲の期待からプレッシャーに押しつぶされそうな時に、この人物の話に出会ったそう。
それは現代社会で様々な抑圧の中で生きる我々誰しもが共感できるところではないだろうか。

 日々の練習の中でふと見せる小さな遊び心がいいアクセントになっている。

 人生にとって何が幸せなのかを自ら問いただしてみたくなる佳作。
美しいモノクロのトーンが印象的。


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