経済之雑談帖（その14）―AT&T、タイム・ワーナーを買収へ

旧ＥＭＩがワーナーに吸収されてから幾らか時間が経過しまして。果たしてあの膨大な量の録音はどうなって仕舞うのか、と些か気を揉んだのですが（わたくしは旧ＥＭＩは御贔屓なので）、幸いな事にある意味旧ＥＭＩ時代より、此処暫く市場からは姿を消していた、わたくしが泣いて喜びそうな（大袈裟）往年の録音をモリモリ再発してくれるのは、有難い限り。

が。

今度はそのワーナーがアメリカの通信最大手のＡＴ＆Ｔに買収されるとの報が。ううむ、凄いと思ったら、どちらかと言えば守勢の買収の様で。

＜引用開始＞

巨人×王様　ネット時代に価値生めるか　ＡＴ＆Ｔ、タイムワーナーを買収

米ＡＴ＆Ｔが米タイムワーナー（ＴＷ）を買収する。米国の「通信の巨人」が「エンタメの王様」をのみ込む大型Ｍ＆Ａ（合併・買収）の買収総額は９兆円近い。一昔前ならウォール街のみならず、世界のメディア業界やエンターテインメント（娯楽）業界を熱狂させただろうが、今回は分からない。２社はインターネットの世界からの重圧を受けており、「守りのＭ＆Ａ」の性格が強いからだ。

■「ＧＡＦＡ」という脅威
「コンテンツこそ王様だ」。米国の放送などメディア業界、ハリウッドの映画に代表されるエンターテインメント業界の経営者たちはしばしば、こうした見方を披露する。消費者への接点がテレビだろうと、パソコンだろうと、大事なのは、コンテンツ。つまり、面白い番組、質の高い報道が大切という考え方である。ところが、メディアやエンターテインメントのビジネスを取り巻く環境は、こんな見方を揺るがしかねないほどのスピードで動いている。消費者にドラマや映画などのエンターテインメント、ニュースなどの情報を提供する最も身近な存在はかつて、ＴＷなどのメディア企業だったが、今や違う。「ＧＡＦＡ（ガーファ）」と呼ばれる企業群が無視できないようになった。

ＧＡＦＡとは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの４社の頭文字を並べた造語だ。それぞれ、ネット上の情報の検索や広告、音楽などのコンテンツやモノの流通ばかりか、仕事仲間や友人、家族らとの情報交換の場を取り仕切る企業である。

■瓦解した「世紀の合併」
それらは、ネット上のビジネスを牛耳る「プラットフォーマー」とも呼ばれ、消費者の暮らしにテレビ以上に欠かせなくなっている。その影響力は当然、ニュース配信ばかりか、映画やテレビドラマの配信にも及ぶ。動画配信などは、ネットフリックスも台頭、かつての「王様」の存在感は小さくなっている。2000年に発表されたＡＯＬとＴＷの「世紀の合併」はネット業界のスターと名門メディアの組み合わせが話題になり、画期的なサービスやビジネスモデルが誕生すると期待された。ウォール街やハリウッドが熱狂し、シリコンバレーでも関心事になった。日本でも、「通信と放送の融合の時代が近づいた。日本も見習うべきだ」と言われたことがある。

しかし、この世紀の合併は何の成果も生まれないまま、瓦解した。そして、この間、ネット企業はすさまじいスピードで台頭する。一方、伝統的なメディアやエンターテインメントの名門企業は次の一手を見いだせなかった。

■時価総額は3000億ドルだが……
株式市場は正直である。ＴＷの時価総額は約700億ドル（７兆円超）で、ＡＴ＆Ｔは約2310億ドル。合わせて約3000億ドルとなるが、その２社が束になっても、アップル（約6260億ドル）やグーグル（約5580億ドル、親会社のアルファベットが上場）、アマゾン（約3880億ドル）、フェイスブック（約3790億ドル）にはかなわない。

ＡＴ＆Ｔは米国でベライゾン・コミュニケーションズと並ぶ通信の巨人ではある。衛星放送大手ディレクＴＶを買収するなど積極策を打ってきたが、顧客が「これが使いたいから、ＡＴ＆Ｔを選ぶ」というサービスは生み出せてはいない。このままでは、単に通信インフラを提供する「土管屋」になりかねない。もし、ＡＴ＆ＴのＴＷ買収の目的がＴＷのコンテンツを使って自社の携帯電話や放送サービスの顧客を増やすことだけなら、「テレビ世代」と「電話世代」の巨大企業がコンビを組んだにすぎない。

ＧＡＦＡのような「ネット世代」の企業群から消費者の支持を取り戻せる魅力的なサービスを生み出せるか。そこに今回の巨大Ｍ＆Ａの成否がかかっている。そして、ウォルト・ディズニーやバイアコム―ＣＢＳなど他社に再編機運が一気に広がるかも左右するだろう。その中には、「ハリウッド村」の一員でもある日本のソニーも含まれる。

＜引用終了＞

出典Web:http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK23H3R_T21C16A0000000/?dg=1

ううむ、時代は最早ＡＴ＆Ｔやタイム・ワーナーですら、過去の企業に追いやろうとしているのでありますか。還暦近くのぢぢいとしては、ちょっと頭が付いていきませんねえ。『驛長驚ク勿レ、時は変改ス。一栄一落、是春秋』の言葉が身に沁みます……