『
怒り』
原作は未読だが、『悪人』の原作者・吉田修一と李相日監督が再びタッグを組んで贈る濃密なミステリー。
“リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件”の市橋達也をヒントに、顔を変えた犯人が身近にいたら…という想定劇。
千葉・東京・沖縄に前歴不肖3人の候補者が登場する。
誰が真犯人か、それとも無関係なのか。
まるで接点がないように思える3人にはどういうつながりがあるのか?
そんなことを思い浮かべながら力強い筆致に引き込まれる。
謎解きは途中で「もしかしてトリックを使っている」のかと思っていたが、予想したトリックはハズれた。しかしハズれて良かった。謎ある3つのケースをつなぎとめるポイントには納得。
稀代の実力俳優たちが揃ったこともあり、頭から最後まで熱演のオンパレード。
これ見よがしに細部まで計算された演技がクローズアップで映し出される。
ただ、正直いうと絶叫・激情型の芝居は少しくどい。
この手が好きな人には至福の時かもしれないが、やや長めの尺の中では胃もたれしそうだった。
それとホクロの件が少し引っかかったのも事実。
それぞれのロケーション(とりわけ沖縄)は効果的である。
沖縄の抱える基地問題も取り込むあたり強かな一面もうかがえる。
家族の在り方と信用問題がドラマを形成し、グッタリするほどの熱量と絶望的な現実を描き出すが、最後にわずかな希望も感じさせる。
妻夫木聡と綾野剛のカップルは必見!
見事に満員御礼でした。
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