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2016年08月29日23:57

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新・音盤雑談帖(その47)―ベートーヴェン交響曲全集 フルトヴェングラー/ウィーン・フィル、バイロイト祝祭管弦楽団、他(その5)

フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲全集についての感想文を綴って来ましたが、今回は第四交響曲について御託を並べてみようと思います。

以前も記しました様に、わたくしにとってベートーヴェンの第四交響曲の刷り込み盤は、同じフルトヴェングラー/ベルリン・フィルとの実況録音盤(正確には聴衆無しの、放送用録音の方)。所謂『ウラニアのエロイカ』と並んで、これでフルトヴェングラーの演奏に嵌って仕舞ったもので、その影響を脱するのに結構時間が掛かりました。
その所為か、この曲の演奏で心惹かれるのは、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルの来日実況盤だとか、これまた余りにも有名な、クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団の、これまた実況録音盤であるとか、強烈な実況録音への嗜好が強くて、些か困ったものでありまして。

これ程強烈では無くても、クレンペラーの2種類の実況録音(ウィーン・フィル、バイエルン放送交響楽団)だの、ベーム/ウィーン・フィルの来日公演の実況盤だの、どうもシューマンの有名な表現を借りるなら、「北国の巨人の間の、可憐なギリシャの乙女」からは遠い演奏が御贔屓な様で。無論、ワルターに代表される、柔和でなだらかな演奏が嫌い、と云う訳ではないのですが、手が伸びるのはどうしても刷り込み盤の影響が強いのか、『大』交響曲的な演奏が好みに染み付いている様で。

さて、戦後のフルトヴェングラー/ウィーン・フィルの演奏。少し大袈裟に言えば、明日の運命も定かではないと云った状況下、只ほんのひととき、音楽にのみ救いを求める、と云った緊迫感は大分後退しているものの、その分音楽に余裕のある、ふっくらとした平穏な響き、と云うのは(オーケストラがウィーン・フィルという事もあって)本来の曲想からいうと、こちらの方が演奏としてはスタンダードに近いと言っても宜しいのでは、とも思います。矢張りティンパニは少し引っ込みがちでありますが、この曲では『英雄』程には気にならないですね。

個人的には、あの強烈なベルリン・フィルとの実況録音盤に大いに魅了されるものの、もう少し余裕を持ってフルトヴェングラーの演奏を聴きたい、と云う場合にはこのウィーン・フィルとの演奏の方がよろしかろうと思います。この音盤も、リマスタリングで表情の輪郭が随分くっきりして聴こえるので、自然に聴けるというのは中々大きいのではないか、とも思います。
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