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2016年07月05日01:32

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『葛城事件』

葛城事件

 入念に罠を仕掛けて観客を落とし込むタイプの監督だろうか。
『その夜の侍』の赤堀雅秋監督の自作戯曲の映画化だそうだが、テーマも変更してあると聞く。

 高圧的で自己中な考えを押し付ける<父・清>は昭和にはよく見られた父親像。
良かれと思ってであっても父が原因で、負の連鎖が起きている。
力の逃げ場所が内側に向く長男と外に向かう次男の違いはあっても問題の源流はそこ。

 父親は親から受け継いだ地元の金物屋を営む。
先のない小店舗よりも子供には大きな夢を託したい気持ちはよくわかる。
しかし、現実は容易ならない。

 失敗することが許されない不寛容の時代に生きている我々が直面する問題かもしれない。
次男の稔は、おそらく『実る』の意味を併せ持つのだろうか。
ミカンの木がそれとなく示唆する皮肉な顛末は「なるほど」と思う冴えを感じる。

 偽善がまかり通る家族の中で最も<歪んだ行動>を見せる次男がある意味もっとも人間的なのか。
彼なりの自己表現だったのかもしれない。
そんな次男と獄中結婚を望む女の不気味さに背筋が凍る。
彼女が育った家庭も見てみたかった気がするが、そこは推して知るべしなのだろうか。
全員の見つける答えがどれもこれも悲しい。

 ただ、今は昭和じゃないので何らかの解決方法はあったのではないのか?
その点が少し弱く感じる。
劇中で流れる弦楽四重奏は四人家族のバランスを指しているのか。

 頑固な父親<清>を演じた三浦友和のヤサグレ熱演が光る。

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