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2016年04月24日23:59

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温故知新所蔵盤聴き直し雑談帖(その10)―Erich Kleiber Decca Recording 1949-1955

さて。エーリッヒ・クライバーがデッカに残した録音集成(除く歌劇、6枚組)のボックス・セットを改めて聴き直して、と云う事で日記に感想文を書きつけ始めたのが、実は5年前。その時は4枚目の、ウィーン・フィルとのベート−ヴェンの第九交響曲迄書いた所で、中断したままに。

忘却の彼方、と云う訳ではなかったのですが、このボックス・セットを仕舞っておいたケースを、何処に置いていたかが不明になり(まあ早い話が、一番下に行って仕舞ったので、取り出し難くなったから、なのですが)、中断を余儀なくされて仕舞いました(と丸で他人事)。先日必要があって、CDを収蔵しているケースの入替をした所、このボックス・セットを収めたケースが上の方に来たので、漸く続きを書く事が出来る様になりました。

さて5枚目に収録されているのは、1948年・1949年にロンドン・フィルを指揮して録音された、ベートーヴェンの第六交響曲『田園』と、モーツァルトの第四十番交響曲。
田園交響曲の方は、クライバーのベートーヴェン交響曲録音として、余りに有名なアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との名盤があるので、分が悪いのは否めない所。オーケストラの力量や音の色合い、そして(これは止むを得ませんが)SP録音とLP用の録音では、ロンドン・フィル盤は二歩も三歩も不利、でありますね。おまけに第一楽章・第二楽章は原盤が失われたのか、板起こしと思しき音質(スクラッチ・ノイズが多い)でありまして、尚且つ第一楽章が音の繋ぎ方が拙劣で、感興を削がれる事甚だしいものがあります。それでもアムステルダム・コンセルトヘボウ盤同様、早いテンポによる颯爽とした田園であるのは間違いない所。

一方四十番は、原盤がちゃんと保存されていた様で、音質的にも問題は少なく、オーケストラの独自の音色、と云う点では多くを望めないものの、親父クライバーのモーツァルト解釈を聴くには十分か、と。ワルター程歌に傾斜しては居らず(尤も歌に不足している、と云う訳でもなく)、四歳年下のベーム程には堅牢な構成、と云うイメージは少なく(柔である、と云う訳ではありませんが)、録音が良ければ40番の代表的演奏の一つに挙げても、遜色はないと思う次第。

クライバーはウィーン・フィルと録音した、名盤として知られる『フィガロの結婚』の全曲があり、モーツァルトはかなり得意としていたと思うのですが、交響曲は(わたくしの知る限りでは)33番・36番・39番とこの40番位しか残っていないのではないか、と。41番、38番辺りの演奏を聴いてみたかったと思うのですが、何処かに録音は残っていませんかねえ。

同時代に大物が多過ぎて、指揮者としては少し早い年齢で没した事もあり、親父クライバーは今日(わたくしなんぞが初めて倅クライバーを知った頃とは逆に)、倅クライバーの影に隠れた存在の様な扱いでありますが、もう少し関心を集めても良いのではないか、と思いますね。一頃実況録音も幾つか出ましたが、既存の曲目と重複が多かったのが(それはそれで、色々聴き比べが出来て、意義は十分にあるのですが)、ちょっと残念。
わたくしはLP時代に出ていた、ベルリン・フィルを指揮した一連のテレフンケン録音が好きで(ウィンナ・ワルツや、確か『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』もあった様な)何処からかCD化されないか、長年首を長くして待っているのですが、残念な事に何の動きもない様で。何かあっと驚く様な録音が発掘されませんかねえ。
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