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2016年01月16日03:20

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『キャロル』

キャロル

 自由の国アメリカでもタブーは存在する。
徐々に明るみに出てきているとはいえ、まだまだ隠しておきたいことはある。
ハリウッド映画が華やかだった50年代に同性愛を描くことは不可能だった。
私の記憶の中で一番古いハリウッド映画でこの題材を取り扱ったのは『噂のふたり』(1961年)だろうか。

 一目ぼれを信じる人と信じない人がいる。
それでも、人が人を好きになる理屈を解明できた人はいないのではないか。
それくらい恋愛感情は<論理>ではないということ。
相手が誰であれ、愛情を注ぐということに差別や区分けはないはず。
しかし世の中は偏見でルールを押し付ける。

 “人生を変える運命の出会い”をしたデパート店員テレ―ズ(ルーニー・マーラ)と上流階級の主婦キャロル(ケイト・ブランシェット)。
出会いから深みにはまってゆく様をトッド・ヘインズ監督は丁寧に描いて見せる。
この監督らしく時代の再現力と映像の美しさは必見。
衣装や小道具、セットもそうだが、話す台詞も50年代を思わせるノスタルジックな印象を与える。

 原作はパトリシア・ハイスミス(クレア・モーガン名義)の自伝的小説だという。
時代の中で許されなかったタブーを官能的な香りを漂わせながら社会的問題を落とし込むことに成功していると思う。

 美しく切なくやるせない映画で、甘美なメロディーが心地よく包み込む。
しかし何といってもこの映画は二人の女優の名演技で語られることになるのではないか。
ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラという強力なタッグは映画をワンランクあげている。
とりわけルーニーは受賞しても何ら不思議ではない。
(オスカー候補に二人とも入っているが、ルーニーの主眼で展開していると思うので助演女優というのに戸惑う。)

 同性愛のタブーを描くという意味では、今では多少パンチは弱いかもしれないが、「自分自身に正直に生きているのか?」という問いかけと見れば他の事にも当てはまるだろう。

 手袋の「なぜ」は聞くまでもないのか。

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試写会@ユーロライブ
2月11日より公開


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