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2015年12月16日00:44

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点鬼簿之雑談帖(その58)―平井隆太郎氏の訃報

立教大学の社会学部長も務められた事のある、同大学の名誉教授の平井隆太郎氏の訃報が伝えられました。何故、早稲田出身のわたくしが立教大学の先生の訃報を御紹介するか、と申しますと。

<引用開始>

江戸川乱歩の長男、平井隆太郎氏が死去

平井隆太郎氏(ひらい・りゅうたろう=立教大名誉教授、作家、江戸川乱歩の長男)9日、肺炎のため死去、94歳。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は長男、憲太郎(けんたろう)氏。立教大社会学部長などを歴任。東京都豊島区の旧江戸川乱歩邸や蔵書の保存に尽力した。著書に「うつし世の乱歩」など。

<引用終了>

出典Web:http://www.sankei.com/life/news/151215/lif1512150024-n1.html

と云う訳でありまして。わたくし昔、江戸川乱歩と血縁に当たる松村喜雄さんと云う、推理作家・翻訳家の方と知り合いになった事がありまして。
まあ此の方は、大変な人でありまして。横溝正史や鮎川哲也、と云った日本の推理小説家の大御所は、みんな君付けで呼ぶ親しいお友達。
ご本人は元々外務省の御役人さんだったのでありますが(フランス語が目茶苦茶出来た人で、一度御宅にお邪魔した所、仏蘭西語のミステリーの洋書がゴロゴロしている有様。「先日も調べ物の為の本を探しにパリに行ったんだが……」なんて話を、無造作にされるもので肝を潰した思い出が。

もう20年以上も前に他界をされた方ですが、生前江戸川乱歩に話が及ぶと、「いやあ、隆太郎君がいっつも親父の事しか聞かれないから、すっかり臍を曲げちゃってねえ。乱歩さんの蔵書なんか、家族で管理なんかしてたら、相続税かなんかで売り飛ばさざるを得なくなって、大変な損失になるんだがねえ」と嘆かれるのが常でした。曰く、乱歩さんが『幻影城』と云った海外ミステリの紹介のネタになった、外国の作家の作品を本屋で探して来たのは、僕なんだよ、との事。
また曰く、「乱歩さんの奥さんも未だ生きて居るんだけど(当時の話です)、もうすっかり呆けちゃってねえ。あれだけ僕が若い頃にしょっちゅう遊びに行っては世話になっていたのに、もう僕が誰かも解らなくなっちゃってねえ。もうああなると、ありゃあ早く眼を瞑って貰った方が、隆太郎君も考え直す機会が訪れて、丁度良いんだが」と、これまた大変な事を口にされて、またまた腰を抜かしたものでした。

と云う訳で、平井先生には全く面識は無かったのですが、何となく身近に感じる方ではありまして。何年か前に、有名な乱歩の土蔵と蔵書を立教大学に寄贈されたと知って、松村さんの心配ごともこれでうまくおさまったのかなと思った次第。

謹んで故人の御冥福を御祈り申し上げる次第です。
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