『バードピープル』

『バードピープル』

　理屈や既成概念にとらわれている人には評価しづらいか？
普段、窮屈な生活からストレスを感じて自由を欲することは珍しくないだろうが、いざ実現となると難しい。
映画も自由な実験をしようとしても、商業面で歯止めをかけてしまう。
独創性を優先する人にはぜひ見て欲しい一品。

　シャルル・ド・ゴール空港内のヒルトンホテルを舞台に一人の客と一人のルームメイドの不思議な物語。
大きなプロジェクトを抱え、日夜諸外国を飛び回るゲイリー。
仕事は順調だが、ルーティンのような毎日に人生が消耗して行っているのを感じる。

　かたや客と顔を合わせることもなくひたすらこき使われるルームメイドのオドレー。
自分の都合は無視されて仕事を押し付けられ、それでも感謝一つされない。
見上げる先には、いろんな思いを乗せた航空機が今日も飛び立つ。

　現代にありがちなデジタルツールやうわべだけの付き合いでしか他人とつながれない不満感。
そこにあるのは現代人の抱える孤独であろうか。

　漠然とした不安に苛まれることは誰しもが経験していることなのじゃないだろうか。
便利な生活、手を伸ばせば何でも手に入る。しかし、心の隙間を埋めるものだけは手に入らない。

　パスカル・フェラン監督のぶっ飛んだ発想でつくられたリアルとファンタジーを掛け合わせた本作の評価は割れそうな気がする。
ありがちな妄想に「あの鳥のように自由に羽ばたきたい」というのがあるが、まさにそれなのだ。
アイディアは面白いが、理屈もからくりも何もない。
ただ、「そうなっている」のだ。(笑）
視点を変えるだけで、自分自身の生き方も変わってしまう着眼点は面白い。

　ポイントとなる役どころで日本人が一助になるというのはなんだか嬉しいようなこそばゆいような…。(笑)

　ともかくスズメの撮影は驚嘆である。
いきなりアニマルプラネットかBBCアースかといった映像に切り替わるのには戸惑いを覚えたが、鳥目線のパノラマビューは圧巻。

　“着地点”も清々しい余韻を残す。